「日米同盟」は対中国包囲網の世界戦略だ!
米国は東南アジア諸国連合(ASEAN)と17日夜、政治、経済、社会の各分野で包括的な協力関係の強化を合意し、APECの開催に先立ち釜山で共同声明を発表しました。
その中で米国はASEAN全体と貿易投資協定締結に向けた交渉を始める方針も合意しています。
年末にマレーシアで開催される「東アジア首脳会議」などを睨み、米国はASEANへの影響力拡大を目指す中国を牽制する強い意味合いを込めたようです。
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「米国とASEANの共同声明」その中身と背景
米国とASEANの共同声明では、安全保障・政治、社会、経済などの広範な分野での協力強化を網羅的に示しています。特に安全保障・政治分野では大量破壊兵器の拡散防止、テロ対策の強化、麻薬の密輸、人身売買防止などで協力関係を強化し推進する方針を盛り込んでいます。
経済分野での協力関係は、主に、経済統合(米国とASEANの力関係を量ればASEAN側の片務性が高くなる)の推進に力を注ぐことも強調しています。そして「米国とASEANが地域的な貿易と投資の枠組みについての協定の締結作業を始めることでも合意」した模様です。
米国は、「貿易投資枠組み協定」を「自由貿易協定(FTA)」締結に向けた交渉開始の前提条件として提起したと考えるべきでしょう。
米国は、ASEANとの経済関係を強化するために各国と個別協定で議論するよりも、地域全体を相手に網羅的な協定を包括的に結ぶことが合理的で意義深いと考えているようです。
一方、ASEAN各国の側も、おそらく「米国と、個別の貿易交渉に入れば、壁が厚く困難なテーマが連続すると想定しているでしょうし、米国とは地域全体でFTAとしての実現に向けた第一歩とする」ことを選ぶ方が良いと、むしろ期待値の方が大きいのでしょう。
米国がASEANとの関係強化をAPECの場でアピールする最大の理由は、ASEAN市場への影響力を強め拡大しようとする中国を牽制する強い狙いを込めています。米国は今年7月にラオスで開催されたASEAN地域フォーラムにライス国務長官が欠席したことなどもあり、ASEAN地域を軽視しているとの強い批判をASEAN側から受けていました。
中国は、今年7月にASEANとの貿易自由化を「モノ」の面で実行に移しました。12月にマレーシアで開催される初めての「東アジア首脳会議」で、参加資格を持たない米国を尻目に存在感を示すことが予想されます。このため米国は「東アジア首脳会議」を主導するASEAN各国との友好や関係性を強化する姿勢を明確に示す必要があり、ASEAN各国への影響力低下に歯止めを打ちたいメッセージを示したのです。
中国はASEAN内で通行権を求め貿易戦略を強化
一方中国は、雲南省などASEAN地域の後ろに控える南部の内陸山間地域から、海への通路とそれに伴う市場を確保したいとの基本戦略を抱えています。中国は、何よりも米国主導による民主化要求を拒否し経済封鎖を受け続け孤立中のミャンマーに、まず接近し、軍事技術を含む多面的な援助を積極化しています。驚愕すべきことは中国政府だけに止まらず、中央政府直轄都市の上海市人民委員会の直属機関が、ミャンマーへの支援を直接間接に行っていることです。なぜ、そこまで積極的な支援を行うかを考える必要があります。中国の狙いは南部(内陸山間地域)からインド洋への通路(出入口)を確保することにあります。より分かりやすくいえば、ミャンマーを縦断する大河であるイラワジ川の船舶通行権を獲得し、中東原油をマラッカ海峡や南シナ海を経ず直接船で輸送することを考慮しているようです。また南北回廊(雲南省からラオスを縦断しタイへ抜ける)と命名される陸路通行権も既に確保しました。加えてイラワジ川での河川(船舶)通行権を確保すればより安全性を向上させることができます。これとは別にミャンマー内を貫く原油輸送のパイプライン建設も視野に入れた動きを始めているようです。ASEAN市場と海(インド洋とシャム湾)への通行権を求める中国は一気に活発な動きを見せています。
日本がASEANで置かれている中国との状況(関係性)
このように中国が一方的な動きを強めると、ASEAN地域を通過しない限り原油輸送(基礎エネルギーの供給)を確保できない日本は、シーレーンの継続的な安定性や安全性の面で大きな不安要素を抱えることになります。同時に基本的にはASEAN地域での影響力の低下を招き同市場への影響力も弱体化させると考えなければなりません。日本も本格的に中国の動きを牽制する行動を強めることが不可欠となっています。まずは「東アジア首脳会議」自体を、中国のミャンマー支援に象徴されるような「上海協力機構」化を阻止することが重要です。最優先事項は中国の影響力を低下させることであり、全力を挙げて取り組まなければならないテーマです。そのためにも、ASEAN地域の周辺国家として有力な利害関係者でもあるオーストラリアやニュージーランドとの協力を欠かすことはできません。
米国は、インドとの友好な関係性を構築することが次の最大テーマとなります。その場合、中国は対抗策として、パキスタンとの関係性を見直し友好協力を強化した上でインド洋への西側出入口を確保する動きを強めるでしょう。
中国の対外戦略とその基本姿勢
中国は、海洋への出入口確保に向けた動きを活発化させていますが、内陸側では、これ以上に資源確保のための戦略的な動きを強めているようです。
中国は、旧ソ連邦内の国家だった、カザフスタン、ウズベクスタン、キルギスタン、タジキスタンの中央アジア4国に対し、これらの各国とロシアを含め「上海協力機構」を2001年に設立し、経済、軍事を含む安全保障の分野で協力支援関係を締結しました。
これらの4国は、やがて中国への軍事基地提供も含めた関係に発展すると想定しておく必要があります。米国は、アフガニスタンへの反テロリズム(対テロ戦争)に入る際、キルギスとウズベクから軍事基地の提供を受け(見返りも実施し)ています。中国は「上海協力機構」で加盟国の外国軍駐留反対を宣言させました。中国は、アゼルバイジャンで手に入れたカスピ海原油の輸送パイプラインをカザフスタン経由で既に建設し終えています。
また、中国は自らの主権(無茶苦茶な)を主張し続けて止まない、新彊ウイグル自治区(東トルキスタン)では天然ガスの採掘を始めようとしています。日本では、中国による東シナ海の天然ガス採掘の件だけに目を集中させがちですが、中国は、ここに掲げた2件以外にもベトナム領海内のトンキン湾での天然ガス採掘に向けた共同開発事業をベトナム政府へ打診しています。基礎エネルギー(石油と天然ガス)確保に向けて懸命のようです。
中国は、抱えた12億の人口を維持するために必死に取り組みを強め、そのためには衝突も辞さないと至る所で角遂する強い姿勢を顕しつつあります。
米国は、インドにも同様ですが、対中包囲網を完成させ維持する上からも、モンゴルへ強力な楔を打ち込むことを必要としています。そのため、ブッシュ大統領はAPECの帰路、モンゴルを公式訪問するのです。
これらの背景を考えた上で、ウォール・ストリート・ジャーナルの「日米首脳会談」評を眺めると、日米の置かれた立場が鮮明に見えます。
<引用開始→ "アジア最大の経済大国で域内最強の民主主義国家日本が、ブッシュ米国政権の後押しで域内安全保障に果たす役割を拡大しつつある。アジアには北朝鮮の金正日総書記や台湾問題、軍事力を増強している中国などの危険要因があり、ブッシュ戦略の中で米日同盟強化は最優先課題だ。
ブッシュ大統領が「親しい友人」に数える小泉純一郎首相の下で、日本は「普通の国」を目指している。日本が国防に従来以上の責任を持ち、国際的な安全保障問題に果たす役割向上も決意したということだ。
両国は軍事的連携の拡大に同意する報告書を発表。密接な軍事協力は「域内の安定を損なう軍事力の台頭を防ぎ、脅威に即応するために必要」なのだという。北京よ、聞いているかだろうか。
今後は航空防衛やミサイル防衛などの分野で協力を強化する必要がある。米陸軍の太平洋司令部は日本に移り、陸上自衛隊と基地を分け合う。
米政権は平和的で国際的な形での中国の発展を後押ししてきた。だが、中国が別の道を選べば、強化された日米軍事同盟が最悪の事態を回避する道を開くだろう。(17日付社説)" ←引用終わり>
中国とロシアの関係性と日本外交の立場
ロシアは、いまやアゼルバイジャンでカスピ海原油の採掘を成功させたことにより、サウジアラビアを追い抜く世界最大の産油国になりました。世界のエネルギー事情を左右させることができる国です。もう、10年前のイメージの国でないことを理解しなければ、ロシアの戦略転換も中国との関係も理解できません。
中国は、ロシアのシベリア横断パイプラインをロシアの沿海州(日本海=日本のため)へ引かせずに、東北地域(自国領)内への引き込みをロシアとの間で合意した模様です。この瞬間に、日本がこれまで実施してきた様々な対露支援が、同時に終焉を迎えることになったと考えるべきです。
その瞬間、ロシアの対日戦略は大きく方向転換し急速な修正が加えられたわけです。「北方領土」の帰属問題など雲散霧消したと冷静に捉えなければなりません。なぜなら、日本の役割が急低下したからです。ロシアの論理に従えば「戦争で負けた方が悪い」のです。極めて分かりやすく明快な論理を、現在のロシアの政治指導者は展開することでしょう。
従って、21日APECの帰路に訪日するプーチン露大統領との「日露首脳会談」は、形式だけの儀礼的な砂を噛むような無味乾燥になり、得るものは何もない会談となるでしょう。
日本人は、本当に、自らが置かれている世界での位置関係を充分に理解できているのでしょうか。その上で、短時間に合意された「日米軍事同盟」への大転換を受け容れるのでしょうか。この件は、9月の衆議院総選挙では全く争点にならなかったのに、自国を防衛するためなら仕方がないじゃないかと、すましていてよいのでしょうか。そこまでのフリーハンドを与党へ白紙委任し全てを一任勘定で運営させる主権付与(逆には放棄)したのでしょうか。全く分かりません。理解できません。これって本当に危なくないですか?危ないことだと思いますけどね。どうでしょうか。
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