米国ブッシュ大統領は、薄氷を踏む南西アジア歴訪を終える!
米国のブッシュ大統領は中間選挙を控え、「対テロ戦争」の勝利を演出するため懸命の取り組みか?
ブッシュ大統領は、アフガニスタン、インド、パキスタンを駆け抜けた。今秋行われる中間選挙を乗り切るために「対テロ戦争」勝利の演出は不可欠だ。思えば、ニューヨークのワールドトレードセンタービルをビン・ラーディンが率いるアルカイダから攻撃を受けたことが始まりだった。その後、イラクのフセイン政権を倒すため、あらゆる小理屈を並べ立て、周到に戦争準備を進め、いきなり攻撃しフセイン大統領を倒したものの、イラクではフセインが倒れることを待っていた各宗教勢力の過激派からは、予想外に手荒い(徹底抗戦)歓迎を受け、想定外の泥沼状態から抜け出せず藻掻き苦しむことになった。
このため、中間選挙を勝ち抜くことはほぼ絶望的な状態ともいわれ、起死回生を狙う上から、「対テロ戦争」勝利イメージを打ち出さなければ進退窮まれりという状況だ。
そこで、対テロ戦争の原点ともいうべく優勢を保っているアフガニスタンである。しかし、アフガニスタンでの「対アルカイダ・タリバン」戦争を継続できるのは、何よりもパキスタンがあってのことだから、パキスタンの現政権ムシャラフ大統領との関係を更に強化し、順調な関係を保っていることを世界に見せる必要がある。
そのためには、パキスタンが仮想敵国と捉えるインドを押さえておかなければ、構想そのものが覚束なくなる。
元来、パキスタンもインドもインド亞大陸の兄弟であり、同じ国といえなくもない。パキスタンの正式名称は「パキスタンイスラム共和国」という「イスラム国家」である。インドは「ヒンズー教を重視する国家」であり、宗教対立を原因として分立国家となった。両国を植民統治したのは「連合王国」を名乗る「英国」である。
両国の対立を象徴するのが「カシミールの領有権」を巡る争いである。インド亞大陸は元々地方領主(いわゆるマハラジャ)が統治していた。カシミール居住者の多くはイスラム教徒らしいが、地方領主がヒンズー教を信奉しているということで、英国はカシミールの多くをインドに帰属させ、居住するイスラム教徒を抑えつけるという真に稚拙な、またありがちな政治統治の未熟さが、イスラムの教えにもヒンズーの教えにも沿うことなく、互いの宗教概念に火がつき「争闘の場」と化し、以降50年の年月を経て「領有と解放」の闘いは激化する一方だ。
自己防衛を貫徹する目的で「核兵器を開発、長距離弾道ミサイルも開発」を争い互いに保有し合うことになった。両国は「核兵器保有国」である。
アフガニスタンでの戦争は、パキスタンとの間に聳え立つ急峻な山岳国境地帯へ移り、パキスタン側からの攻撃が最終事態を決すると考えられている。
パキスタンの西側半分ほどは、「トライバルエリア・辺境地帯」と国内でも区分され、アフガニスタンの主力民族でもある「パシュトン人」を中心とした各部族が支配する地域で、各部族の長をパキスタン政府が統治する構造になっている。
「トライバルエリア・辺境地域」には「イスラム原理主義の神学校」が設けられ(現在は、パキスタン政府が閉鎖)ていた。アフガニスタンで狂気の支配をした「タリバン」は、パキスタン側のイスラム神学校で学び、イスラム原理主義を学び勢力を増加させ、ついにはアフガニスタンを彼らのモノとした歴史もある。簡易には説明が難しい地域をパキスタンは抱えている。タリバンの残存勢力もアルカイダもパキスタン側へ逃げ込んでいる可能性を否定できない。これらの背景を抱えるパキスタンは、ムシャラフ大統領が、国際社会(とりわけ米国)からの圧力を受け「対テロ戦争」を掲げる米国に協力している。ムシャラフ大統領は「毒喰わば皿まで」だろうが、一般論として捉えれば、パキスタンの多くの人達は、ムシャラフ大統領の米国容認姿勢に否定的であり、痛烈な批判を展開している。イスラム原理主義過激派は、パキスタン国内で数々のテロ攻撃を止めようとしない。
ブッシュ訪問を前に南部の大都市カラチで、米国総領事館に隣接する建物が爆破され、多くの犠牲者が出ている。
米国は、「ムシャラフ大統領が、いかに、詰られようと、困難であろうと、パキスタンをいま手放すこと」はできない。何があっても、何をしても米国はムシャラフ大統領の政権を支えなければならないのだ。そのためにも、インドが勝手なことをしてパキスタンを刺激するようなことに出たら、それこそ元も子も失うから必死なのである。
昨秋のカシミール大地震でも、米国はムシャラフ政権を支える姿勢を明確にするため、即決で大量の緊急援助部隊を組織し送り込み、圧倒的な物量による救援展開を行った。一方で、カシミール紛争に火がつかないよう、インド政府にも働きかけ、両国に分断されたカシミール内を直通バスを始め、トラック輸送も含めたルート開放を実現させた。
米国は、対テロ戦争に勝つためには、パキスタンを手放せない。そのパキスタンを米国から離れないようにさせるには、インドに手出しをさないことと、パキスタンの経済開発が不可欠となる。しかし、パキスタンだけに経済開発支援を伝えると、インドがヘソを曲げるから、インドにもそれ相応の見返りが必要だ。そこで巨大なインド市場へは米国資本の参入とそれによる経済発展を、パキスタンには経済開発と市場開発を総合的に支援することで、「米国につく方が豊かになる」イメージを創出しようとしている。
これらに加え、両国ともに「核兵器開発」についてはお咎め無しとしたことが上げられる。この度のブッシュ訪問を受け、両国はいかに国際社会が求めても「核拡散防止条約」の批准や加盟は永久にしないだろう。これは、イランに「核開発」の合理的正当性を与えることにもなった。頭のよいイランは、この事実を見逃すわけがない。米国は、自らの都合で「核兵器についても、ダブルスタンダードの存在を明らかに」してしまったのである。
イランは、徐々に米国を牽制しつつ苛立たせる動きを強めるだろう。中東では、ひとつ間違えば、パレスチナもイスラエルも吹き飛んでしまうような、難しい流れが始まろうとしている。
最近の米国は、一貫した外交戦略も軍事戦略も保持していないように見受ける。
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