ナマのベトナムが分かる、週刊ベトナムニュース第67号
ウィークリー・ベトナム・ニュース
■ 平成18年6月17日 土曜日 第67号
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■ こんにちは!!
いつもお世話になっておりますベトナム、ニャットアインです。
今日もここ一週間のベトナムの主なニュースをご笑覧下さい。
翻訳は直訳とせず、日本語に馴染む意訳としておりますので、ご注意下さい(笑)また、訳者の独断と偏見を交えた辛口寸評を入れてみました。内容が片寄り、言葉が多少過ぎる箇所も多々あろうかと存じますが、これもベトナムを愛するゆえの諫言とお許し下さい。
誤字・脱字はご愛敬ってことでお願いします<(_ _)>
尚、記事の転送は営利目的以外なら原則自由ですが、自己責任において行い、その中で被った被害・損害に対し筆者は責任を負えませんのでご了解下さい。
ベトナム・ニュース その67 今週のヘッドライン
* 6月12日(月) 両刃の剣 改革・開放
* 6月13日(火) ラムズフェルド米防衛庁長官訪越の裏
* 6月14日(水) 越米関係 新たな局面
* 6月15日(木) アンドリュー王子がやってきた!
* 6月16日(金) タイを追い抜く日 そして、、、
* 6月17日(土) 海外労働者高需要を食い物に
お詫び+++++++++++++++++++++++++
先週のベトナムニュース第66号で掲載した6月7日付け「流通大変革をもたらす事態か?!」の中で、手足口病と訳した箇所がありましたが、ベトナム在住の読者からご指摘を受け調査した結果、手足口病でなく口蹄疫の蔓延であることが判明しましたので、ここに訂正しお詫び申し上げます。
調査結果で判明したことは手足口病は人の病気であることに対し口蹄疫は牛の病気であることです。しかしながら、現在、ベトナムではこの二つの病気が同時に蔓延しており、翻訳前の単語も両者非常に似通っていた為に、今回の間違いを生じる結果となりました。
いずれにせよ、今後、このような誤りを起こさぬよう注意し作業して行く所存です。
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6月12日(月) 両刃の剣、改革・開放
*彼女たちは時に目を閉じ、頭を後に下げたり、立ち上がって化粧を落としたりしている。彼女らは日々の糧をNguyen Trai通りのメイクアップクラスでフェイスモデル(筆者注:メイクアップ・アーティスト養成用化粧練習モデル)として得ており、ここには私の友人Chu Huyen Trangさんが他の20名のクラスメイトとして学んでいるのだ。
私はこの職業に興味を持ち、Trangにクラス見学を頼んでみた。
そして喧噪に包まれたクラスの雰囲気は驚くほど魅力的であることを発見したのだった。
Trangさんのメイクアップを受けながら、Nguyen Minh Thuyさんは私に、「ここで選ばれる事はそれほど難しくなく、良いプロポーションをしているとか、資格を持っているかは関係ないの。寧ろこの仕事に情熱を持ち、魅力的な顔さえあれば誰だってなれるの」と話してくれた。
Thuyさんは偶然、この道に入ることになり以前は考えた事もなかった。Thuy同様、私が出合った殆どのフェイスモデルたちもまた偶然、この道に入ったという。フェイスモデルになる前、キャットウォークモデルを1年、その後、2年間ホテルのフロント係りを勤めたPhan Thanh Huyenさんはフェイスモデルは日々、違ったパウダーやアイシャドウ・リップを試すのだという。「ここでは無料でメイクアップの仕方を学ぶ事が出来るだけでなく、他の生徒たちの実習からテクニックを掴む事が可能なの」とHuyenさんは語る。
二人の若い女性たちの話から、現在、若者らが彼らの将来のキャリアとして人気を集めている事を気づいた私は、同時に我々の生活の質が向上し人々が身だしなみに気遣う価値観を持ち始めているのを思わずにはいられなかった。最近では様々な人々がこの仕事を副業にし始めており、従来のモデルさん以外に大学生・失業者、それに主婦なども参入しているとのことだ。しかし、友人に因ると、この仕事は見かけほど楽ではないというのだ。ThuyさんとHuyenさんは毎日6時間の拘束を受け、月給は80万ドン(US50$)程度だという。加えて、フェイスモデルは常に様々な化粧品を試される為、髪の質や肌の質が悪くなりやすいのだ。
Thuyさんに因れば、フェイスモデルになる前、彼女は化粧をしたことは一度もなく、髪や肌は自然のままだったのだが、その後、肌は硬く、厚みを増し、かさかさするようになってしまい結果、洗顔液で顔を洗い、フェイスクリームやフェイスマスクで肌を整えなければならなくなってしまったのだと応えてくれた。それでも幸運なことに、殆どのメイクアップの先生たちはフェイスモデルの卵たちを注意深く指導してくれるため、入学して3ヶ月間は睫毛の手入れの仕方や眉毛の引き方などの技術を教え、この間だけはお肌も安全なのだという。
メイクアップの中でも最も重要なポイントが目の部分である。先ず、目元がドラマチックなのか否かを見極めることが出来るようになるまで、生徒たちは3ヶ月から半年みっちりと目元の処理を習わなくてはならない。フェイスモデル業のもうひとつの欠点は、彼女らが仕事で派遣される多くの美容院などで、フェイスモデルの入れ替えが激しいことだという。
美容院では見習い美容師の練習に毎回変わったモデルで練習させたいが為らしい。
友人曰く、この仕事はそれほど認知されているわけでもなく、肌にも良くないのだが、不思議なことに既にフェイスモデルを生業としている女性たちにとって、天職だと考える向きが強いらしいのだ。「全ての美容院がフェイスモデルの入れ替えをしないのが、多少の救いかな」とThuyさん。
私は先日の日曜日、再度メイクアップクラスを訪問した。フェイスモデルの実習を終えた生徒たちは、多くの若い女性がそうであるよう週末の街に溶け込んで行った。もちろん彼女たちの顔には最新のメイクアップが施されている。そんな彼女たちの表情を捉え私は、彼女たちが単なるお金を得る手段としてこの仕事に就いているわけでなく、自分自身のファッション感覚を満足させることを生き甲斐として見出しているのだと考えを新たにしたのだった。
(辛口寸評)
今回の記事は、これまでにベトナムで存在しなかったビジネスが新たに生まれた一例として興味深いものである。つい最近まで圧倒的なベトナムの庶民は満足に食べることが出来ず、貧しさに強いられた生活を送って来た。誰もが食べるためにしてきたことと言えば、最も手近なところで農作業だった。それが経済の改革・開放により外国からの企業が進出。そして新技術の導入がなされ新たな価値観や思想まで移植されはじめ、新市場が形成されて行く過程を如実に表している。
話は少し横道に逸れるが、これは戦後の日本もそうで、GHQがもたらした戦後政策により、新憲法が制定され土地解放がなされ、教育基本法が改定されそれまで田舎に閉ざされてきて、百姓しかするしかなかった多くの若者たちが都会へ出てこれるようになった。あるものは就職でまたあるものは大学進学でだ。特に大学へ進学した多くの若者たちは“自由時間”を満喫すると同時に、そのエネルギーを反体制に掲げ学生運動に力を入れて行ったのだった。要するに運動が出来るほど“暇”が出来たわけである。
同じようなことは80年代のタイや90年代前半の天安門事件の中国でもその過程を辿っている。つまりここから読み取れるのは、ベトナムでもいずれ同様の民主化の波が押し寄せるであろうことであり、誰にもこの動きは止められないであろうということなのだ。市場が形成され経済力が高まるのは、国家の興隆にプラスの効果をもたらすのは今更言を待たないものの、一方で国民が“知る”しかも深く知ることに繋がってゆく。この辺りのことはベトナム政府も十分認識していると思われるが、途上国とはいえ情報化の波はインターネットの出現以来 加速度的な早さでこの国に浸透しつつある。その中での政府の国民の舵取りがどのように行われて行くのか注意深く観察して行くのが必要だろう。
6月13日(火) ラムズフェルド米防衛庁長官訪越の裏
*アメリカのDonald Rumsfeld防衛庁長官は先週の日曜日、合衆国はベトナムとの軍事関係緊密化を望んでいるものの、現時点では旧敵国の軍事施設を利用する計画はないと発表した。越米通商条約締結後、ラムズフェルド長官はベトナム戦争時、消息を絶った米兵の遺骨収集調査をしている米軍調査チームに激励をする目的でハノイに訪れたのだった。ハノイへ向かう途上、インタビューを受けたラムズフェルド長官は、以前、激戦の地ベトナムで軍事関係をアメリカが持つことは彼のひとつの目標であると述べた。
「何をして何を求めるかが我々の関心事ではなく、ベトナムとアメリカが近年築き上げてきた心地よい関係を今後も構築して行くことにある。しかし、現状のままだけでは障害が生じる可能性もあるだろう」とラムズフェルド長官は語った。現在、批判を集めるイラク戦争やラムズフェルド長官のリーダーシップを多くの人々がベトナム戦争の泥沼と比較する向きもあるが、そのことと時間が過ぎたからといってベトナムの地で命を落とした米兵の遺骨収集のサポートを軽んずることがあってはならないとも長官は付け加えた。
「ベトナムのWTO加盟を阻止してきたアメリカの政策が取り除かれた。私はベトナム人民とその経済発展に強い感銘を受けた」と述べ、人口構成比による経済成長伸び率の高さや勤勉な国民性はWTO加盟国に相応しいと持ち上げたのだった。アメリカ議会は遅くともベトナムとの恒久貿易関係締結を可決し、ベトナムのWTO加盟促進させると考えられている。今回、国防省長官としてベトナム訪問はラムズフェルド氏にとっては初めてで、ベトナム戦争終結後30年ぶりとなる。ラムズフェルド長官は戦時中の60年代後半に下院議員として訪問し、10年前に一般人として出かけたことがある。
(辛口寸評)
ベトナム戦争は今もアメリカにとって、想い出したくもない歴史の汚点であり、トラウマとなって居座り続けている。だからこそ、現在、泥沼状態に陥りかけたイラク戦争後処理は容易にアメリカ人をベトナムをイメージさせネガティブな記憶と結びついてしまうのだろう。そんな、想い出したくもないベトナムではあるが今のアメリカには重要な軍事上の戦略パートナーとして不可欠になっているのだ。
アメリカの至上命題は、恒久的に“強いアメリカ”=“基軸通貨ドル防衛”を堅持し続ける為に兎に角、石油の囲い込みに奔走しなければならない。
結果的に石油確保がアメリカを血に飢えたオオカミの様に戦争に駆り立てているわけで、現在のイラク戦争にせよ、昨今ではイランの核施設に対して横やりを入れ、何とか世界世論を背景に付け虎視眈々と、戦争の糸口を見出そうと躍起になっている。パパブッシュ以来(冷戦終結以来ともいえる)、アメリカは中東の石油支配を目論んできた。
その第一段階がイラクで、この国には現時点の石油日産産出量で計算すれば実に130年余りの埋蔵量が眠っておりその量は世界一だと云われている。第二段階がイラン、この国の埋蔵量は世界第二位でやはり後100年は持つので、アメリカが次のターゲットとして狙う理由も頷けるというものだ。
因みに世界第三番目の埋蔵量を誇る国はどこか調べてみると、これがサウジアラビアである。表面的にアメリカとサウジアラビアは親密な関係を維持しているよう端からは見えるが、恐らくアメリカの第三段階の解体国は、間違いなくサウジとなるであろう。
次に、ここ10年で急速に経済力と軍事力をつけてきた国がアジアにある。
云わずと知れた中華人民共和国である。アメリカとほぼ同等の国土面積を持ち、鄧小平以降、国の近代化を推し進め今日、目覚ましい経済発展を遂げつつあり、アメリカにとって将来、覇権を脅かす存在にまでなってきた。アメリカとしては、何とか中国を押さえなければならず、そのため中国のエネルギー生命線である中東の石油ラインを牛耳る必要に迫られてきた。戦略上、中東産油国の石油を全て押さえるまでにはまだまだ時間が掛かる。かといって、そのまま放置しておけば益々、中国は国力をつけアメリカを凌駕しかねなくなる。ここにベトナムが何故アメリカにとって重要なカウンターパートなのかが見えてくるのだ。
それは中国への石油海上輸送をベトナム沖の南シナ海で止めてしまおうという魂胆なのだが、そうするにはベトナムの協力なくしては進まないのだ。
アメリカに於ける現在のベトナムの位置づけは冒頭でも述べたように“戦略的軍事パートナー”である。この関係は、実質的に日米同盟を遙かに凌ぐ関係として捉えられている。
もちろん、ベトナムはアメリカほど経済以外の関係を模索はしていないものの、悪い気はしていない。何分、ベトナムにとっても中国は表面的には平和を装っているが、永遠の仮想敵国であり、全く信頼をしていないし、アメリカが近い将来、ベトナムがアセアンの盟主として君臨し発言力を増す存在になることある種、肯定するものだからだ。
まさか?!そんなことは勝手な空想だと思われる向きもあるかと思う。
しかし、昨年から米軍艦船がしばしばホーチミン港やハイフォン港に表敬訪問として寄港しているといえば、如何だろうか?中国もバカではないので、このようなことは十分察知している。だからこそ、中国は積極的にロシアと結びつこうとしているのである。
6月14日(水) 越米関係 新たな局面
*先週、月曜日、訪越中の米国防省長官ドナルド・ラムスフェルド氏は、米越の結びつきは新なフレーズに入り、旧敵国の人々とアメリカは軍事的な協力関係を加速させてゆくだろうと語り、ベトナムはアメリカにとって米国防総省がテロ対策や勃興中で軍事的脅威を年々増しつつある中国を押さえる布石として協力関係を築いてきたアジアの国々のひとつであると付け加えた。
ラムズフェルド長官はベトナム国防大臣Pham Van Tra氏とPhan Van Khai首相と会談をした後、昨年のKhai首相とブッシュ大統領との会談の中で二国間の経済・外交・安全保障関係新レベル構築について話し合われたことを想い出し、今、まさにその関係が出来つつあると述べた。ラムズフェルド長官とTra国防相は軍事面での多面的な協力関係を拡大するとマスコミに語り、手始めに、ペンタゴン主導のプログラムに因る医療訓練を開始させることに同意し、埋設地雷の除去やベトナム戦争中消息不明になった米兵の遺骨発見に双方が協力してゆくことを確認しあった。
ベトナム戦争後31年、そしてアメリカとの国交回復が行われ11年が経過し米越関係は軍事面で新たな局面に入り、昨年からは米艦船のベトナム寄港も行われるほど良好な状態が続いている。今年の夏に米艦船の4度目のベトナム寄港が成されるだろうと、ラムズフェルド長官は語ったものの、訪越直前の寄港地シンガポールではマスコミに対し、ベトナムへの軍事施設建設については白紙状態であると述べたが、米国防省関係者に因れば米越軍事関係は徐々に拡大してゆくことになるだろうとコメントを残した。今回のラムズフェルド長官の発言はベトナム政府の対中国への一定の配慮が働かせたものと考えられている。
米軍アナリスト曰く、1979年の越中戦争を経験したベトナムはアメリカ同様、北京と良好な信頼関係を構築したいという希望を持つ一方で、中国の急速な軍事力拡大に危惧の念を持っているという。元米国防総省中国局長Daniel Blumenthal氏は、実際、ベトナムは今後の越米軍事協力関係強化は昨今の中国の軍事力増強に対するアセアン地域からの懸念の現れとして抑止力として利用したいと考えているのだと語る。
越米軍事協力関係はベトナムを東・南シナ海のバランサーとしての機能を持たせるばかりか、アメリカとしても台湾海峡ヘの別のアクセスポイントとして利用させたいのだと、ワシントンのアメリカンエンタープライズ研究所のアナリストは分析する。ペンタゴン国際軍事訓練教育プログラム(IMET)の下、行われる軍事留学生制度では、ベトナム人将校に対し英語でテキサス州サンアントニオ基地で実施されることになるだろうと、ペンタゴン当局者はコメントを残している。
ラムズフェルド長官とTra国防相は未だ発見されていない1805名のアメリカ兵の遺骨収集の協力について話し合った。ベトナム戦争では58000名のアメリカ兵が戦死し、300万人のベトナム兵及び市民が命を落とした。ペンタゴン当局者曰く、アメリカはベトナムに対し30万人に及ぶ米越戦死者の技術的な面での遺骨収集協力を申し出ており、今のところベトナム側の真摯な支援に感謝しているものの、ベトナム国内だけに留まらずカンボジアやラオスで戦死した米兵遺骨収集のデータ探索に一層の努力を払って欲しいとする。
ベトナムは今年11月、ブッシュ大統領を招きアジア太平洋経済フォーラムを主催することになっている。
(辛口寸評)
図らずも昨日の記事で書いた辛口寸評の内容を肯定するような今日の記事となった。ここでは更に踏み込んだ今後の米越軍事関係について述べられている。昨年も書いたが、ロシア太平洋艦隊が長く使用してきたベトナム中部の南シナ海に面した軍港カムラン湾はロシア撤収後、僅かなベトナム海軍の艦船が係留されているに過ぎない。しかし、既にこの港を利用する後釜は決まっている。米太平洋艦隊の一翼を担う(横須賀基地でもお馴染みの)第七艦隊の寄港地と目されているのだ。
1973年のベトナム戦争ではベトナムの偵察・爆撃・艦砲射撃・機雷処理に従事した艦隊が、如何に対中国戦略の為とはいえベトナムの軍港を間借りしようとするのはまさに歴史の皮肉といえよう。もちろん、ここに記した話は現段階では筆者の推測に過ぎない。が、これが現実の日となったその時こそ、日本は現実問題として国家有事に備えなければならなくなることだろう。
6月15日(木) アンドリュー王子がやってきた!
*先週8日、二日間の日程でホーチミン市を訪問中のヨーク候アンドリュー王子はNha Be区のUS250m$を費やしたコンテナポートに降り立った。サイゴン・プレミア・コンテナ・ターミナルはイギリスのP&Q社と我が国のTan Thuan Industrial Promotion社との合弁企業で、Hiep Phuoc地区に共同で2000hrの工業団地を開発する責務を負っている。国際貿易と投資特別代表の肩書きをも持つヨーク候はHiep Phuoc地区共同開発事業は重要なイギリスとベトナムの架け橋になるだろうと語った。ホーチミン市から10キロほど下ったSoai Rap川西岸に建設予定の工業団地には950メートルに及ぶ波止場に40hrのターミナルが隣接している。
Tan Thuan社代表Phan Hong Quan氏に因れば、この港は最新技術の機器を投入した世界規模の施設を備える他、ベトナム人作業員の為の訓練施設も設けられるという。また完成の暁には年間1.5mトンの貨物を処理可能となり、政府のマスタープランであるベトナム港湾ネットワーク計画に則って建設されるこのターミナルがベトナム経済、特に南部確証に果たす役割は多く貿易拡大・産業発展・輸出入の促進に繋がるだろうとホーチミン市人民委員会副委員長Nguyen Van Dua氏は語った。
この港はベトナム貿易のゲイトウェイに導くもので重要な政府の計画を実行するものであり、全大陸にあるP&Q社のターミナルシステムとベトナム各港を結ぶことになるという。P&Q社はPeninsular港湾会社とオリエンタル・スティーム・ナビゲーション社が1980年に業務提携を結びロンドンに本社を置き設立された会社である。この会社は世界16カ国に27のコンテナターミナルを所有し、2006年3月にDP World社(ドバイ籍)がP&Q社を3.9bポンドで買収したことにより世界第二位の港湾操業グループ企業に発展し、現在は51カ国で事業を展開中。
DP World社会長スルタン アハメド・ビン・スラエム氏曰く、同社の傘下P&Q社と共に歩んでゆけば、今回の事業がベトナム経済発展に大きく貢献するであろうと述べた。アンドリュー王子は市内のブリテッシュスクールへも訪れ教師たちへ日頃の英国子女教育への取り組みに謝辞を述べた。
2000年5月に開校したこの学校も現在では50カ国から1200名の児童生徒が学ぶベトナムで一番規模の大きな学校となっている。また、スタンダード・チャーター銀行支店オープンの記念式典に出席した王子は、US31,500$の小切手をホーチミン市貧困患者支援連盟の視力回復プログラム基金として同連盟会長Nguyen Vinh Nghiep氏に寄付をした。
(辛口寸評)
記憶が定かでは無いが、今回のアンドリュー王子の訪越は彼の国のロイヤルファミリーメンバーとしては恐らく初めてのことだと思う。ベトナムとイギリスは石油関連ビジネスでの結びつきはEU随一であり、ここへ来て海運面でも連携を取り始めたようで、具体的な話は記事の中でしか伺えないものの、ロイヤルメンバーが足を運ぶ以上、かなりの規模と期待を背負う事業であることは想像に難く無い。どんな展開になるのか楽しみである。
好意的に書けばこうだが、実際はタイのプミポン国王即位60周年記念式典に参加するための行きがけの駄賃だったりして(笑)
6月16日(金) タイを追い抜く日 そして、、、
*タイリサーチセンターのKasikornに因れば、ベトナムは貿易・観光・投資の3分野でタイの強力なライバルとなったという。同センターの分析ではベトナムは特に石油を始めとする膨大な天然資源を有し、しかも2006年現在の経済成長率は7.6~8%を達成間違いなしとされており、この数値はアセアン諸国内随一の数値、そのうらでタイの成長率は僅か4~4.5%に過ぎないとしている。
過去10年間、ベトナムの輸出額は1996年のUS7.3b$から2005年にはUS32.2b$へと実に4倍強の驚異的な伸びを見せ、結果的に同国の年間輸出増加率は20%を維持。これに対しタイは10%しかなく、1996年の輸出額はUS55.9b$。そして2005年はUS110.9b$の2倍でしかなかった。今日、ベトナムの輸出ボリュームは既にタイ全体のそれの3分の1を占めるまでに成長し、このままの数字をベトナムが保持し続けたなら、14年後にはタイを追い抜くことになるだろうとしている。
また、センターの資産では2020年のベトナムの輸出額はUS500b$に達し、同時点でのタイのそれはUS463b$に留まるとの見方を示した。
投資に関しては、ベトナムは今年第一四半期だけで215の新プロジェクトを承認し、その投資総額はUS1.6b$になっているのに対し、タイは200件。投資総額は僅差のUS2b$でしかない。ベトナム・タイへの投資国は主に、台湾・日本・韓国・香港・マレーシア・中国、そしてアメリカである。現状、タイの投資環境は政治の不安定さから投資家は敬遠気味なのを尻目に、政治的安定感を増したベトナムへのシフトが進んでいるのだ。
観光分野については昨年、ベトナムは350万人の観光客を集め対前年比で18.4%の増加。今年は360~380万人の外国人観光客受入を目指しており、この数字は実現可能だろうとタイリサーチセンターは結んでいる。
(辛口寸評)
ベトナムがタイを追い抜く日はそう遠く無いだろう。その日まで14年掛かると分析結果は出ているものの、筆者は今後10年でベトナムがASEANの押しも押されぬ盟主になるだろうことを断言する。役人の不正や汚職などまだまだ改善されなければならぬ点は多々あるものの、それでも着実に減少傾向にあるばかりか、WTO加盟を目前として多方面で改革が進められ障害となる懸念事項を払拭しつつあるのだ。
既にアメリカは南シナ海を押さえるためにベトナムを対中戦略上欠くことの出来ないパートナーとして見ており、それを更に強固なものとすべく、旧日、アメリカが南ベトナム共和国に施して来たような直接・間接に様々な支援をベトナムに対し行ってゆくだろうから、ベトナム自国の経済発展努力以外の要素に、この部分が加わるため今後10年でタイを抜くという大きな筆者の根拠のひとつになっているわけなのだ。
以前、タイの友人とベトナム人について話をしたことがある。彼女は、ロンドン大学を出た才媛であるが、彼女をしてタイ人の多くはベトナム人を畏れているという。これは1975年まで、アメリカの後ろ盾があったとはいえ南ベトナム共和国は東南アジア随一の資本主義国家で、当時、タイは足下にも及ばなかったという事実に基づいている。その一方で、筆者が知るベトナム人は常に「タイ人なんて、戦争がなかったから繁栄を謳歌しているだけさ」と考える者が圧倒的多数であることから、これら気力の差だけでもベトナムがタイを追い抜くことは既に既定路線であるといえよう。
6月17日(金) 海外労働者高需要を食い物に
* 6月5日、ハノイ市Thanh Xuan区の公安当局はSong Da投資輸出株式会社会長Dinh Quy Baと社長Hoang Dinh Hoiを詐欺容疑で逮捕した。Ha Tay 省出身で1976年生まれのDinh Quy BaとBac Ninh省出身1983年生まれのHoang Dinh Hoiは46名の台湾労働研修生希望者に労働契約締結斡旋を持ちかけ、それぞれUS2000~6000$を騙し取った疑いをもたれている。
HoiとBaは2005年11月から2006年4月にかけて台湾派遣労働者募集のチラシをHai Duong省・Ha Tay省・Hung Yen省やハノイ市へ送り、46名の応募者を集め登録代として前金を受け取った。しかし、いずれの応募者も仕事を得られず、これが巧妙な詐欺であることが2006年4月に発覚した。Dinh Quy Baの証言に拠れば、彼自身US79500$を着服し共犯のHoang Dinh HoiはUS26400$を着服したという。公安当局では他にも被害者が多数存在するとして、ホットラインを設置。心当たりの方は04-8585617まで連絡するよう呼びかけている。
(辛口寸評)
ベトナムでは昨年、それまで一部の限られた国営企業に独占的に海外労働者派遣事業を認可してきたが、法改正が行われ民間企業の参入が可能となった。とはいえ、この事業に参画するには約4500万円の保証金が必要なので、恐らく今回事件を起こした会社は労働者派遣事業のライセンスを持つ会社の代理店を隠れ蓑に行ったと思われる。ベトナム人の海外労働希望者は年々、需要の高まりを見せている。これは、やはりベトナムと労働先国との賃金差が彼らにとって魅力的な額であるからに他ならない。民間の新規参入が増え、労働希望者の受け皿として海外との橋渡しをすること自体、喜ばしいとは思うが、今後、この手の詐欺事件は高い需要を背景に益々増加することだろう。
以上
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