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2006/06/25

パキスタンの繊維製品・縫製加工業について興味深い事柄!

パキスタンで繊維製品事業者と過ごした10日間の雑感! (4月16日)

在港パキスタン人の誘いを受け、10日ほどかけてパキスタンを訪ねてまいりました。

Pknationalflag南部のカラチと中部のラホールを中心に、パキスタンの繊維工業を拝見したわけです。
中国(大陸)もそうですが、基本的には、まだまだ「少品種大量生産」に軸足があり、圧倒的な量の同一品番を生産する仕組みでした。

訪問先の各工場は、いずれも大規模な一貫生産システムを採用しており、主として、欧州各国市場と北米市場向けの製品に取り組んでいました。
主要どころでは、リーバイス、ドッカーズ、ヘインズ、リーボック、アディダスなどが大きく目立ち強く焼き付きました。

現在、政策面からは、豪州市場の開発と取り組み、力を注いでいるそうです。

パキスタンは、優良な原棉を産出します。
自国で採取できる原棉を、製綿した後、綿紡績する一貫性を保つ数少ない国です。

原棉から綿紡績で綿糸を生産するまでの工程は、基本的には大規模設備です。
また、労働集約性が高いため多くの人手を必要とします。
従って、パキスタンは、衣料品の製造でも、「大規模大量生産システム」が優良と考えているように見えます。

「大規模大量生産」では、残念ながら「高い付加価値」は創出できません。
いくら、頑張ってみても、「大量の商材が高付加価値商材」に、なりえないことは誰にも分かることですが、大規模生産システムを構築してしまうと、例えば日本市場のように成熟した市場が求める「高品質で、四季の温湿にきめ細かく合わせた商材の、多品種・少量・多頻度生産」にはほとんど対応できないわけです。

パキスタンの繊維製品生産事業者の多くが、「自社は、北米(米国)市場、欧州市場(特に英国、仏、独の市場)では強い」と主張します。
確かに、先に挙げた各商標は「いずれも、単一性が高く、同一品番を自国だけに拘わらず、世界市場で販売展開している」わけですから、あえて強いと言えば「強い、と言えます」。
しかし、それでは、いつまで経っても、量としての単一性は高くても、低い付加価値から抜け出すことはできません。

パキスタンの繊維製品製造事業者が受注する「繊維製品」は、その多くが、ジーンズ系あるいはスポーツ用品(中でも汎用品)系に集約されています。
それらの多くはいずれも、基本的に「高度な技術力を必要としない商材」で、何よりも「世界的に普及させ得る普遍性を持つ価格」を要求されることもあり、労働集約に耐えうる地域か国で生産することに最適性があるわけです。
従って、パキスタンは、この点で、これらの商材の生産に最適性を保つと考えることができるわけです。

多くの関係者の皆様との会談の場で、あえて上記のような指摘をしました。
しかし、大半の方は、その意味する点を十分にご理解頂けなかったように思います。
パキスタンの関係者からの主な反論は以下の言葉に集約できます。
「リーバイス、ドッカーズ、ヘインズ、リーボック、アディダスは世界的な著名ブランドだ」というものです。確かに、これらのブランドは世界的に著名です。
しかし、そのポジションは、「ステープルグッズ」に近いポジションで著名なのであり、決して、最高技術、最高品種として著名なのではありません。

例えば、アディダスを例に挙げても、オリンピックやワールドカップに出場する選手のウェアは、一つひとつが「バイ・オーダーのトップコレクション(あるいは、プロコレクション)」と称されるグレードです。
絶対に必要な高度で基本的なテクニックは競争力の原点ですから流出させることはありません。この点は明確に指摘させてもらいました。

次に、「リーバイス、ドッカーズ、ヘインズ、リーボック、アディダスは世界的な高額ブランドだ」との主張が、パキスタンの関係者から返されました。
確かに、世界的に高額な商材に違いありません。しかし、高額品かそうでないかは相対的な所得により意識されるのであり、現に、欧州各国の市場や北米市場で多く消費されるのは、その対象市場へ供給される価格が、それらの製品を求める人々(消費者)には適正で最適な値頃感があるからであって、供給される製品の価値と価格のバランスが保たれているから、それらの市場で消費者に支持されているだけに過ぎないのです。
これは「マーケティングの基本原則」です。

世界の大半は、欧州市場や北米市場に属する消費者ほど、高額な収入を保つ人は多くありません。ましてや、極めて階層構造が明確な、欧米市場や北米市場では、消費者はそれぞれが位置する所得ポジションにより、購入できる商材の価格は限定されますから、それしか買えない人も結構いるわけです。
それらの中には、途上国市場のトップ階層の人達よりも、遙かに下位の階層に属する人達も実際あるわけで、それにより、自ずと買い求めることのできる単価は限定されます。
とりわけ、発展途上国の人には、スポーツ用品(汎用)系の商材でも、高額なブランド品であることは間違いないのも事実です。

人は、多くの場合、自らが属する環境の中で、「多くの物事を、考えがち」です。
それはそれで、仕方がないのだけれど、やはりそれでは「ファッション商材の市場を開発する」にはどうしても無理が生じます。(実は、この点を巧妙に衝いているわけですが)
なぜなら、「ファッション商材」を始めとする「ファッション」は、他の人との「差別化」を自らの意識の中で創り出すことで「独自性が高い個の領域」を、自らの創造力で生み出すことにより「他との区別」を徹底して図ることで成立するからです。
汎用商材では、「同質化」はできても「差別化」を達成することは不可能です。
従って、汎用商材に高い付加価値を求めること自体に無理があります。

このため、パキスタンの繊維製品事業者が、現在の仕組みで、「高付加価値」を追究しようとしても無理が生じるのです。
ましてや、成熟した日本市場が求める「高品質で、四季の温湿にきめ細かく合わせた商材の、多品種・少量・多頻度生産」には不向きであり、高付加価値生産には向いていない。いくら、香港経由で日本向けに、あるいは直接、日本向けにと求められても、現状では、ほとんど咬み合わない状況にありました。

無駄ではなかったが、それぞれの収穫を得ることができたパキスタンでの10日間だったように思います。
http://caosintl.spaces.msn.com/blog/cns!45E1EA14CEE60EE0!252.entry

香港で発信しておりました、「カオス顔」は、MSNの事情か、プログラム上の不具合かよく分からないまま、記事の更新がまったくできない状態にあるとのことで、「コラコラコラム」主宰者は、「カオスの顔」からの要請を受け容れ、必要と思われる記事の転載掲出を行います。

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