「北方領土海域」で発生した漁船銃撃拿捕事件、国後(ロシア)での裁判を前に考える!
この事件について二度ばかり、「コラコラコラム」は、所見を掲出しました。
最近、この所見へのアクセスも多く頂戴しています。そこで、以前の掲出(リンク)と共に、もう一度、流れを考えてみたいと思います。
https://febnet.cocolog-nifty.com/column/2006/08/post_caeb.html
日本は、国境侵犯について、考えが根本的に甘い! <<8/20>>
https://febnet.cocolog-nifty.com/column/2006/08/post_8288.html
「北方領土海域」で発生した、漁船銃撃拿捕事件、政治の体たらくを糾す! <<8/24>>
「北方領土海域」は正式な国境がありません。あくまで暫定的な意味における国境は存在すると考えます。暫定的なという意味は、日本とロシアの間には、正確な国境線を画定する条約が結ばれていないためです。よく言われる「日露平和(友好)条約」を締結し、という前置きに近い呪文のような話題は、既に60年近く唱えられてきました。ロシア側の政治的事情もあり、正確には「ソ連邦」が崩壊するまで、外交の場で、この件について話題に出しても、取り敢えず「言っておく」という程度の認識だったろうと考えると自然です。
なぜ、条約を締結できないのかと言えば、本邦とソ連邦(後継国家としてのロシア)の間には、「北方領土」に懸かる問題の解決を得られないからです。基本的にコサックの血を引くロシアは「強奪国家」と指摘することも可能です。歴史的には、人の弱みに、いち早くつけ込み、強奪することを繰り返し、今日の版図を獲得しています。ソ連邦が、第二次世界大戦週末時点の行為として、よく指摘される「日ソ不可侵条約」を一方的に破棄し、中国東北部(もとの満州)へ攻め込み、駐留日本軍(関東軍)を粉砕し、多数の兵士を捕虜としてシベリアへ抑留し過酷な労働を強いたこと。あるいは、樺太(サハリン)南部地域[列記とした日本領]へ進軍し、不法占領(強奪)したまま61年が経過しています。ソ連軍の侵攻を前に、真岡郵便電話局の局員が職場を捨てず業務を守りながらも、全員が服毒自殺した悲劇も忘れてはなりません。
ソ連邦(後継国家ロシア)は、これほど野蛮な事でも、平然と行いなおかつ繰り返し領土を拡張する厚顔無恥の国です。本邦の政治では、択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島の北方四島の返還を受ければ、ロシアと平和条約を締結できるとの考えが基盤のようですが、戦後のどさくさで放棄したとされる樺太南部についても、改めて検討すべき北方領土といえます。
いずれにしても、ソ連邦の崩壊と後継国家としてのロシアが成立した直後は、ロシアの国内事情や経済事情もあり、本邦が、経済支援してくれるなら「北方四島」は返還しても、という政治選択を検討したようですが、その後、プーチン大統領は、カスピ海地域で大量の原油を開発できることが判明するや否や、ロシアは、周辺のアゼルバイジャンであろうが、包含自治国家チェチェンであろうが、オセチアであろうが、圧倒的な軍事力を背景に国境を守り抜きエネルギー資源を確保し、資源国家としての世界的な地位を確立してしまいました。エネルギー資源を確保したことで、ロシアは、世界の中でも裕福な国家を目指し、その地位を確立を目指しています。
もう、金満国家への近道を獲得したロシアが、極東地域で、いかに経済力を保持していても、小国の日本へ頭を下げ、経済支援を受ける見返りに「北方四島」を手放すことなどあり得ないわけです。そんなことをしたら、カスピ海地域でロシアからの独立を求める包含国家を手放すことに直結しますから、「北方四島」が戻ることはあり得ないと考えるべきです。ロシアは「色丹島と歯舞諸島」の二島返還論で幕引きを狙っているようですが、これでは、国後島と北海道・野付水道、あるいは二島付近の国境確定は非常に難しい事情を抱え込むことになるでしょう。また、同時に、「北方領土」問題は、ロシアに都合のよい形での幕引きとなることでしょう。本邦は、領土問題を論じる上で、国を挙げて「北方領土海域」全体を含む諸問題をよく認識した上で、ずっと主張すべきです。
この曖昧さの上に立ち、「北方領土海域」問題を自らの政治テーマとして、結果的には自己(目的)増殖と揶揄されたのが、件の鈴木宗男衆議院議員です。攻防を繰り返す姿を見て、「どちらもどちらだと」思わず考えさせられます。
さて、そのような背景で生じた、この度の「漁船銃撃拿捕事件」ですが、当初の予想どおりの展開になったように思います。
事件発生時点における本邦(政治)の初動は、基本的に認識が甘かったと思います。根室地域からの怒りに呼応するかのように、慌てふためき、ロシア(モスクワ)へ繰り出す始末では足下を見られてしまいます。件の鈴木宗男議員は、ここ一番と政治の初動ミスを非難することに忙しかったようです。
今回の事件は、基本的には、拿捕された漁船の甘えとロシア側警備船の過剰反応や錯誤も重合したと思うが、結果的に「銃撃・拿捕」となってしまった。その際、不幸にも漁船員が銃撃により死亡した。本邦側の怒りは根室で爆発したものの、「列島を縦断する全国的な怒り」には至らなかった。従って、外交上の初動は軽微の誹りを免れない状態だった。形だけ、交渉能力をほとんど欠いた山中外務政務官の派遣で茶を濁そうとした。ロシア側は、大きな問題になるのも困るはずだったのに、ロシアが行った行為を徹底的に避難する機会を放棄したに等しい仕儀に堕してしまいました。
話は変わりますが、この山中オバサン、自らの「外交政策」にかかる主張を先頃、書籍として出版されたそうです。安っぽいお涙頂戴のヒューマニズム私論をまとめた噴飯モノだろうと想像しますが、そのうち暇な時間でもあれば、目を通してみようかと考える次第です。
まあ、本邦の中も騒がしくなり、ロシア側も捕らえてみたものの、バカらしい事だし、適当に金にして幕を降ろす方策を考えたものと思います。本邦のヒューマニズム論にロシア側が与すれば、国境警備なんて誰もしなくなりますから、国家としての体制を維持する上からも、例え銃撃が間違っていても、「間違っていた」などとは言わないのです。結果は、人道的に対処する(=船は没収・罰金)ことになるわけです。刑を科すより罰金を取る方がはるかに「合理的で、人道的です」から。従って、隣の金持ちは、隣の貧乏人に、金を払って釈放して貰う方法しかないのです。何の交渉能力も持たない、山中オバサンを派遣しようとしまいと結果は同じです。ポーズの外交は止めた方がよいと考えます。
それでは、主要な記事を引用紹介しておきます。
引用開始→ 銃撃漁船の坂下船長初公判は11日、罰金刑の見通し(読売新聞)[nifty WEB]
【モスクワ=金子亨】ロシアのインターファクス通信は6日、北方領土海域での露国境警備隊による北海道根室市の漁船「第31吉進丸」銃撃・拿捕事件で、国後島の南クリル地区裁判所が国境侵犯罪などで起訴された坂下登船長(59)の初公判期日を9月11日に指定した、と報じた。同通信によると、国後島の地区検事は6日、裁判官が審理で証拠調べを行わないなど特例を認めれば、公判は「一日で終了することが可能だ」と語った。
地区検事はさらに、船長に50万ルーブル(約220万円)以下の罰金刑が言い渡されるとの見通しを示した。
ただ、坂下船長の弁護士は「捜査資料には多くの疑問点がある」とし、裁判所が当局に追加捜査を命じる可能性を指摘しているという。
[読売新聞社:2006年09月06日 20時16分]
Copyright(c) NIFTY 2006 All Rights Reserved. ←引用終わり
引用開始→ 拿捕の坂下船長、11日に初公判 罰金刑の見通し (asahi.com)
2006年09月06日19時33分
ロシア国境警備当局による日本漁船への銃撃、拿捕(だほ)事件で、北方領土・国後島のユジノクリリスク地裁は6日、国境侵犯と密漁の容疑で勾留(こうりゅう)されている北海道根室市のカニかご漁船第31吉進丸の坂下登船長の初公判を11日午後2時半(日本時間同日午後0時半)から開くことを明らかにした。検察当局は、船長に罰金刑が科せられるとの見通しを示した。インタファクス通信によると、ユジノクリリスク地区検察は「法廷が証拠の再調査をしなければ、即日結審も可能だ」と述べた。判決は50万ルーブル(約220万円)以下の罰金刑が見込まれる。日本側が返却を求めている船体については没収されるとの見方を示した。 asahi.com ←引用終わり
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