「自由貿易」抜きで日本はないが農業が巨大な壁!農業の改革は前進するか?
ASEANとようやくEPA(経済連携協定)の締結を合意した日本。
年内締結を確実にして貰いたい。そのとき、壁になるのは「本邦の農業」だ。
数年前、本邦がメキシコとFTAの締結を目指したとき、締結のためメキシコは大統領が自ら公式訪日、東京でサインするのを待つばかりだった。
ところが、日本は土壇場でまとめることができなかった。その理由は、メキシコ産のオレンジの関税引き下げで合意できなかったと、公式に説明されたようだが、一説によると、日本で「アボガド」を生産する農家を守るため、合意できなかったとのことだ。
工業生産者の側は、「アボガド」生産農家の収入も大事だろうが、その結果、「メキシコ市場で4000億円」を失うことになったとの解説を加えている。
なぜなら、メキシコは米国とカナダ3ヵ国で「北米自由貿易協定(NAFTA)」を締結している。労賃の安いメキシコで生産される日系企業の工業製品は、豊かな米国とカナダ市場で有利な市場を獲得し販売展開をしてきたのだから、メキシコで生産する製品の部品を日本から送る(輸出)したとき、高率の関税をかけられたら、その瞬間に工業製品の競争力はいかにメキシコの労賃が安くても一気に低下するわけだ。
そのため、北米市場への一大生産拠点だったメキシコから撤退(引き上げ)を余儀なくされたメーカーは数多い。
日本の政治は、実に近視眼的である。
残念だが、目の前しか見えない。大局的に事態を見て戦略的に判断することができない。
実に悲しい幼児性を見せてしまう。
ASEANとのEPAは、何年も前に、日本の側が仕掛けASEAN側に日本へ提案させたのが本質にも関わらず、グズグズしている間に、機を見るに敏な中国がしゃしゃり出て、あれよあれよと言う間に、ASEANと自由貿易協定(FTA)を締結してしまったのだった。
すると、横から出しゃばりの韓国が、やはり中国同様に、いきなりASEANと自由貿易協定(FTA)を結んでしまったのだった。
日本の政治は口先だけで、機嫌良くODA(政府開発援助)資金をバラ撒くけれど、本質的にASEANの願いを聞き入れず無視し続けていたのだった。
しかし、ここにきて、このまま放置すると、ASEAN市場は「中国」と「韓国」に席巻され何も残らない状態に陥る危険性があった。
何よりも、対中国戦線を日本と共同で構築しようというASAEANの悲壮な決意を踏みにじることになる。もっと、平たくいえばASEAN市場を失うばかりでなく、日本が調達し消費するエネルギーの大半は、中東でありASEAN諸国から供給を受けているのであり、同時にASEAN各国の海を通過して運ばれている事実を真剣に考えるべきだ。
それにも関わらず、知らぬ顔を決め込んだ後に支払わねばならない対価の大きさについて、もっと冷静かつ戦略的に捉え考えるべきなのだ。
さて、ここで本邦の農業である。
農業は、本邦の社会と文化の基盤である。この点について異議はない。
しかし、農業生産人口は最大でも200万人である。この点も留意すべきである。
貿易交渉で常に問題になるのは、いずれの国でも「農業」であり、最後まで保護が必要になるのも「農業」である。この点を捉えてセンシティブに考えることを否定はしない。
しかし、同時に、農業の専業従事者の数は激減している。その理由は、農業だけでは喰っていけないからである。様々な国の規制も受けている。
そのためかどうか知らないが、農業従事者は、所有地が幹線道路沿いなら、田畑を埋めたて商業施設へ転換し賃貸収入を得る人も増えてきた。
このため、国は農業を保護する目的でがんじがらめの規制をかけるが、一方で、農業を放棄する人が増えていることもあり、食糧自給率は低下する一方だ。
喰えないから後継者がいない状態で、放置されたままの農地は33万ヘクタールにのぼるという。これほどの無駄を聞いたことがない。
それなら、その土地を農業で有効活用したいと考えるのは常識外だろうか。
外国の農業に勝てる、本邦の農業を構築すべきだと考えるのは普通の議論だと思うが、農林水産省は、これまでそのように考えなかったのだ。
ちょっと考えても200万人の専業従事者に「農林水産省」という中央省庁が統合もされず残っているのだから、本邦の政治がどこを向いているか、よくよく現れているのではないか。
いくつもの批判があり、それに対する反批判も出尽くしたのか、議論するエネルギーも失せたのか、ようやく「農業生産に株式会社の参入を認める」ところまで到達したようだ。
コイズミ・ドンイチロォは米国のために、本邦の貴重な資産を売り飛ばす「構造改革」とやらを絶叫し、全く中身のない意味不明の議論を繰り返したが、本当に必要な「農業の改革」という構造改革は手もつけなかった。
各国との自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締約しようとすれば、農業の改革は避けて通れない。「ようやく、農業生産の抜本的改革に向けた制度の整備を始める気になったのか」というのが、今日の感想だ!
これが整えられたなら、日本はようやく、これまでの長い苦しみと暗黒の苦闘に少しは曙光を見出せる切っ掛けになるのではないかと思う。
引用開始→ 農地取得、株式と交換で・諮問会議改革案 (日経NET)
日本の農業の競争力強化のために政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)がまとめた改革案の全容が7日、明らかになった。5年をメドに全国の耕作放棄地(遊休農地)をなくす目標を設定。農業の大規模効率化を進めるため、農家が企業に農地を譲る代わりに株式を受け取る制度や、農地の定期借地権制度の創設を盛り込んだ。
改革案は安倍内閣の農業生産性向上の柱となるもので、諮問会議のグローバル化改革専門調査会が8日に発表する。6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太方針2007)に反映させ、今秋の臨時国会で農地法など関連法の改正を目指す。(07:01)
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