舵取りが難しい「パキスタン」情勢!?
国際社会は、その舵取りの困難度において、現在のパキスタンは極限に近い段階へ向かう。
パキスタンが「核兵器保有国」でなければ、とっくに「米国」により踏みつぶされていた事だろう。
幸か不幸か、パキスタンは「核兵器保有国」である。
加えて、米国の天敵「イスラム原理主義者」との戦いで最前線に立っている(と考えている)こともあり、取り敢えずは繋ぎ止めておく事が最前提だ。
しかし、「米国」の国内世論は「民主主義」を軸にした政権でなければ、友好な関係を評価しない。従って、場合と状況に因れば「撤収」することも考慮に入れなければならない状況に追い込まれかねない。
「米国」は右手で「戦争」を主導し、左手で「民主主義」を主導するという、なんとも相反した「政策と戦略」を強いられているワケで、つまり矛盾した論理の中での状況打破を考え展開しているワケだ。
これでは、自国領土以外で展開する長期戦を戦えるワケがない。
「米国」は、正面戦において、戦力では戦う相手を圧倒する事はできるが、「ゲリラ戦」へ持ち込まれると、戦術面でも戦力面でも一気に見劣りする。
何よりも、「社会的価値観」を支える「宗教律」に大きな軸足がある社会を根源から理解することはできない。
その点で、「米国」は、1960年以降、完全に勝利した戦いはない。
できないのである。
「米国」は相手が持てない「戦略兵器」を圧倒的に保持すれば、それを動員する事により「戦いには必ず勝てる」という論理だが、絶対的価値観が異なる相手に対処するには難しい。
「イスラム原理主義者」との戦いは「宗教的価値観」を含めた戦いだから、「兵器」やその「戦術」だけでは戦えない事を悟るべきだ。
ここにきて、「パキスタン」情勢が不透明になるに伴い、いよいよ「その観点」による検証が不可避となった。
しかし、「米国」議会と世論は、常に流動的である。「民主主義」の原則を守れない「パキスタン」に対し批判的である。この側の声が大きくなると「イスラム原理主義」との「戦争」を止めなければならない。
そして、何年か後に「アフガニスタンとパキスタンへの介入は(その当時の政権による)政策の誤りだった」から「自分達には罪はない」と、平然と言い放つのである。
「米国」は、「ベトナムの解放戦争へ介入したのは(その当時の政権による)政策の失敗だった」と平気で知らない顔をする。
「米国」が掲げる「民主主義」というものは、実に都合のよい、ご都合主義で、テメー勝手な話に過ぎない事を世界は肝に銘じ弁知しておく必要がある。
さて、「米国」は「パキスタン」に対しどのような政策を打ち出すか?
ムシャラフ大統領の側にすれば、ここまで追い込んだくせに「煩い、蝿のような奴らだ」と考えている事だろう。
それなら、「イスラム原理主義者」と手を組めば、「実に簡単に困難な状況を打開できる」と決断するかも知れない。
そうすれば、ムシャラフ大統領にとり、ブット元首相は相手にする必要がない。米国は、いきなり友邦から敵対国家へ大逆転となり、経済的困難(どうせGDPは低迷したままだから)は別にしても、それはそれでよいと考え決断すれば、一挙解決なのだ。
引用開始→ 非常事態宣言解除、米国務副長官がムシャラフ大統領に要求 (讀賣On Line)
【イスラマバード=佐藤昌宏】パキスタン訪問中のジョン・ネグロポンテ米国務副長官は17日、首都近郊ラワルピンディの陸軍施設で、ムシャラフ大統領と会談、非常事態宣言の早期解除を強く求めた。
副長官は前日には野党指導者ベナジル・ブット氏と電話会談した。米国にとって、核保有国であるパキスタンの安定は最重要事項の一つで、隣国アフガニスタンでの対テロ戦争遂行にもムシャラフ氏を中心とした安定政権が不可欠だ。このため、米国は、非難の応酬で剣が峰に立つ「ムシャラフ―ブット連合」の維持に向け、両者の説得を試みている模様だ。
3日の宣言発令以降、米政府高官のパキスタン訪問は初めて。関係者によると、ムシャラフ氏との会談は2時間に及んだという。
中身は明らかにされていないが、外交筋などがAFP通信に語ったところでは、副長官は、非常事態の早期解除に加え、兼務する陸軍参謀長辞任、下院選を2008年1月上旬に予定通り実施することなどを要求。これらが守られないなら、軍事支援を含めた援助を見直す可能性にも言及したという。
これに対し、ムシャラフ氏は「法と秩序が回復されない限り、解除できない」と返答したとされる。
米国は「『テロとの戦い』でムシャラフ氏に代わる人物はいない」との評価を現在も変えていない。しかし、ムシャラフ氏は17日、二つの民放テレビ局を放送禁止にするなど依然として強硬措置を続けている。非常事態が長期化すれば、ブッシュ政権は民主化を停滞させたムシャラフ氏をかばいきれなくなる恐れがある。
また、1人の親米派への依存は本来、高いリスクを伴う。将来的にパキスタンを民主化へ軟着陸させ、さらに安定させるためにも、現在の政治混乱を最小限に抑え込みたい考えだ。
しかし、米国などの後押しで実質合意にこぎ着けた「ムシャラフ―ブット連合」は破綻(はたん)寸前との見方も広がり始めている。
ブット氏が16日、「ムシャラフ氏と民主主義への行程を話し合ったこともあったが、彼の出した結論は『戒厳令』だった」と記者会見で語ると、ムシャラフ氏もBBCラジオに対し、ブット批判を展開した。
イスラム原理主義勢力の影響がちらつくパキスタン政界で、ブット氏のパキスタン人民党(PPP)は数少ない世俗派であり、ムシャラフ政権の補完勢力としては「最適任」というのが米国の立場だ。副長官は16日の電話会談で、「穏健派諸勢力の協力が重要」とブット氏にも説いた。
ただ、米国は、ブット氏単独では、パキスタン軍部を抑えきれないと見ている。軍部に信用のないブット氏は、2度にわたった首相在任中、1度として国内の核兵器施設訪問を許されておらず、2度目の首相時代は、外交への関与も許されなかったからだ。
「ムシャラフ―ブット連合」が完全に崩壊すると、ムシャラフ氏側は、基盤強化を図る余り、原理主義政党「統一活動評議会(MMA)」に協力を仰いでしまう可能性もある。このため、米国としては何としても「連合」をつなぎ留めたいところだ。
(2007年11月17日23時15分 読売新聞)
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