ソニーも、やがて携帯電話・端末製造事業から完全撤退する!?
携帯電話の端末製造供給事業は、儲からないことが世界市場でも明確になりつつある。
確実な利益を得るには、「ノキア」の手法で、①世界中から部品(モジュール)を集める。②ベンダーを組織し部品をセットアップさせた上でジャストインタイムで納品させる。③絶対的に低廉な労働コストの国で圧倒的な量産を行う。④どこの国の市場でも最先端国際価格で販売する(売り切る=市場へ投入する製品の商品寿命と生産量を一定期間に均衡させる)。
ノキアは、中国・天津で生産集中している。
日本の携帯電話の端末製造供給事業は、日本市場だけで年に2回の製品開発を繰り広げ、一年を通じた端末の市場販売量が最大5000万台で10社、単純平均で1社500万台。
1機種当たりの開発費に100億円をかけるというから、仮に平均販売量の事業者で開発費用が2000円。実際には5000万台で各社最低でも2機種は出すから、10社で25機種程度は出てくる。年に2回で平均50機種が競い合うわけだ。5000万台を50機種でシェアを考えると平均の1機種で100万台だ。1台当たりの開発コストは単純に1万円。労働コストに最低5000円はかかる。出荷価格はざっと2万円。これに販売促進費をかけることはできないだろう。自社では行わず自然にキャリア任せになる。それでは自社ブランドの確立ができないという流れができる。
実際には、トップが30%近い市場シェアを保つだろうから最下位は5%程度だろう。
この場合、合計シェア250万台を2機種で分けると1機種125万台という事になる。
125万台の販売では最高の状態を考えて250億円。その中には開発費100億円が含まれる内訳だ。利益は出ない。通常の開発費は5%程度が妥当な線だから、この線を軸に考えると2000億円の販売金額が必要になる。1000万台販売すると均衡を保つ事ができる。
となれば、1機種でそこまで販売する能力は、どの製造供給者も持ち合わせていない。ならばいずれの製造事業者も基本的には事業赤字を構造的に抱えているのだろう。
普及過程では開発コストを吸収できたのだろうが、成熟過程に入るに従い費用吸収は次第に困難となり、現在時点では費用吸収などとてもできない事情を抱えているのではないか。
販売方式の改訂もあり、今後は2年以上の時間経過がなければ買い換えしなくなる。その場合、いずれの事業者も共通し開発コストと販売収入の不均衡は更に拡大するだろう。
しかし市場を飽きさせないためには、最低でも1年に一回の新商品提案と市場投入は不可欠である。なぜなら耐久消費財の技術開発は進化し続けるから、進化を諦め横で見守る事は事業継続の意志がないという事になるから、やはり新技術を取り入れた端末製品開発に挑むワケで市場競争に休みはない。
開発費用をかける事ができる事業者による「体力勝負」に入ったのである。
考えてみたら、現在の「ソニー・エリクソン」は、スウェーデンの「エリクソン」が日本市場を目指したとき、そのレベルの高さに舌を巻き、その当時、世界では圧倒的な著名ブランドの「SONY」も端末販売で苦戦していたのを見て、一緒にやろうと合意した上で携帯電話端末事業で「ソニー・エリクソン」となった。いわば世界で最初の「携帯電話・端末製造の事業統合」だったワケだ。当時の「エリクソン」経営陣は市場をよく見ていたのだろう。その後、世界で携帯電話を事業化した米国の「モトローラ」も携帯電話・端末製造事業から撤退を表明した。耐久消費財の携帯電話・端末製造事業は、「日本市場向け以外」いまや完全モジュール化製品の典型だ。
IBMがPC市場から完全撤退したように、完全にモジュール化してしまった市場や統合(インテグラル)型生産方式を維持できても、そのための開発費が高額で販売量が極端に少数の市場で、端末機を開発し製造し続けるのは間尺に合わない事が明確になりつつある。「IBM」は「デル」とPCで競走する事に、社会的意義を見出す事ができないと考え、また、PCを普及促進させる過程で演じたIBMの役割は充分に果たし、なおかつ終えたと考えたのである。見事な経営判断である。
IBMが、耐久消費財のPC事業から撤退し、本来の事業分野に特化した事でIBMは利益を強化している。同じように考えた場合、モトローラは携帯電話事業で端末の製造供給ではなくキャリア(無線通信提供事業者/例えばドコモやKDDI)への技術提供を中心にしたビジネスを展開する方が理に適っている。三菱電機は重電機事業者として、耐久消費財とも言うより「消費財=携帯電話端末」からの撤退を表明した。今回の驚きはソニー・エリクソンも実質的に耐久消費財と言うより「消耗品=携帯電話端末」からの撤退を表明した事である。ソニーは、重電機メーカーではないが、携帯電話事業で得たノウハウを自社の音楽ソフト提供事業で活かす事ができ、その方がビジネスとして遥かに少数の費用で大きな利益を得られる事が分かったから、儲からない市場からは撤退するのである。
ノキアは、最先端を走らない。最先端技術もない。他の事業もない。
世界で供給された最先端の技術を吟味し、自社にオイシイ技術を部品として大量購入して「ノキア製品」を組み立てる。日本の携帯電話・端末製造事業者が一年に100億円以上かける開発費用を抑え込む事に成功し、世界の頂点に立っている。
実際、ノキアの製品には革新性もなければ、画期的な利便性もない。実に平均的で特徴のない製品だ。従って、日本市場では人気がない。
ところが、世界は広いため「ノキア」程度の製品でも「随喜の涙」で支持する消費者が山といるため、世界のトップに立てるワケだ。
日本市場と、その中心プレーヤーとしての日本の消費者は、この事実をどう捉えるか?
そして自らを国際市場の中で、どう位置づけるか?
この回答の次第で「端末製品を含めた日本の携帯電話事業」の将来が決まるのである。
引用開始→ ソニー、ドコモ向け携帯電話から撤退・国内事業を縮小 (日経NET)
(2008/03/10)ソニーはNTTドコモ向けの携帯電話機事業から事実上撤退する。年内に開発・生産を打ち切り、国内の携帯事業を大幅に縮小して主力の海外事業に注力する。飽和傾向を強める日本の携帯電話機市場には約10社のメーカーがひしめき、収益環境が悪化している。すでに中下位の三洋電機と三菱電機は撤退を決めており、市場淘汰の流れが大手にまで波及してきた。
ソニーは折半出資会社である英ソニー・エリクソンを通じ、世界で携帯電話を「ソニー・エリクソン」ブランドで製造・販売している。国内ではドコモとKDDI(au)に製品を供給。春商戦向けの新型機はドコモに3機種、KDDIに2機種を納入している。 (07:00)
Copyright 2008 Nikkei Inc. / Nikkei Digital Media, Inc. All rights reserved. ←引用終わり
引用開始→ ソニー、ドコモ携帯から撤退…海外市場に経営資源集中 (夕刊フジ)
10社しのぎ削り国内販売頭打ちソニーは10日、NTTドコモ向けに供給している携帯電話端末事業の一部見直しを進めていることを明らかにした。携帯端末をめぐっては、三洋電機や三菱電機が同事業からの撤退を決めており、事業見直しの動きはさらに加速しそうだ。
ソニーは2001年、スウェーデンのエリクソン社と合弁で、携帯電話端末事業を行う「ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ」を設立。同社は見直しについて「日本国内での携帯電話の開発事業を縮小する計画はありません。NTTドコモ向けの商品化計画について一部見直しを図っていることは事実ですが、今後も開発を含めてビジネスは継続していきます」と話している。
事業の見直しについては「他の携帯メーカーが生産したものを『ソニー・エリクソン』ブランドとしてドコモに供給するような形になるのではないか」(業界関係者)との見方もある。
ソニー・エリクソンでは、KDDI(au)向けの一部端末を他メーカーで(OEM)生産してもらい、「ソニー・エリクソン」ブランドで供給しているとされる。
ソニー・エリクソンのシェアをみると、06年度の国内シェアは8%で6位に甘んじている。世界市場をみると、同社の携帯端末の販売台数(07年)は約1億300万台。シェアは約9%で4位につけている。
国内の携帯電話端末市場は、シェア21.0%を握るシャープを筆頭に約10社がひしめいており、販売規模の拡大が難しいのが現状。一方で、ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルなどの通信事業者が要求する高い性能や機能を満たすには、巨額の開発投資資金が必要で、利益が出にくい状態となっている。
さらに国内市場には、販売規模が年間5000万台程度で頭打ちになっているという問題もある。今後は、通信事業者が導入した新料金体系などの影響で消費者の買い換えサイクルが長期化し、市場規模も縮小するとみられており、各メーカーにとって経営環境は厳しさを増している。
三洋電機は携帯電話端末事業を京セラに売却、三菱電機は事業撤退を決めており、ソニーのように撤退とはいかないまでも事業を見直す動きが加速していきそうだ。
ZAKZAK 2008/03/10 ←引用終わり
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