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2009/08/03

ウッカリしていると、東アジア全域は中国に支配されるゾォ!

日本は、真夏の暑い時期にまたぞろ熱い「衆議院総選挙」を抱えています。
何れの側も、財源の精査を欠いた「バラマキ」の額を競うようになってきました。
実に悲しい事です。

日本の国際的位相を、具体的にどうするのかについて、自民党の側も、民主党の側もハッキリしません。抽象的な絵空事の理想論を語る点では力が入っているようですが、具体的な政策をどのように行うのか?
この点について「議論というか、政策というか」その種の議論は、何よりの当事者である候補予定者はもちろん与野党ともに、正面から議論する姿勢がありません。

さて、8月2日の朝日新聞朝刊(東京本社版)は、一面で以下に引用紹介する調査報道記事を掲げました。それなりに興味深く読んでみました。

朝日が、何よりもこの件で「問題提起」したい本質は何か?
やや疑いの眼で見たのですが、
中国による東アジア市場の統合を諒としたいのか、否そうではなく、日本が主導権を持つ事を考慮しての事か、何せ「朝日新聞」が掲げるだけに、ついつい余計な心配をしてしまうワケですが。

香港の友人達は、中国はベトナムを華南経済圏へ組み入れようと、ハッキリ意識した政策や戦略展開を重ねていると指摘します(実際にも、そのように見受けます)。
お人好しの日本は、官民を挙げて積極的にベトナムへの投資を続けているけど、その利益を享受するのは、ほぼ中国であろうとも指摘しています。
だから、中国は、日本がベトナムの交通体系を整備し終えるまで、「何も言わず、何も語らず」ひたすら完成を待つのみであると述べます。

そのように見えるか見えないか、どうか、中国が巧妙に進めている「金融による支配」の方が問題であると、ベトナムフリークの "とらえもん" は考えています。

中国は、経済面では当たり前のように、最近は軍事面でも当然のように、ベトナムへの圧力を集中させています。
まず、ラオスでベトナムの影響力を削ぐ方向へ、猛然とラオス政府への圧力を高めています。(実に酷い話です)
逆に、ベトナムはカンボジアへの影響力強化を進め、ラオスへの中国の圧力を緩和させる方向を模索していると捉え、みています。

その中国は、中越国境貿易を活発化させる事で、「中国人民元」を大量流通させる事を試み、地域経済を呑み込み、ベトナム北部の経済と華南経済圏との統合を目指しているように見受けます。

それを朝日が自慢気に取材したというワケです。
調査報道記事としては、比較的よくできています。
判断は、「コラコラコラム」の読者に任せたいと考えます。

引用開始→ 人民元、アジアに攻勢 ベトナム国境での成功 世界変動
(asahi.com 2009年8月2日3時4分)

Tky200908010317ベトナムとの国境近くの銀行前に陣取るヤミ両替商の女性ら。カバンには人民元とベトナムの通貨ドンが詰まっていた=中国広西チワン族自治区、琴寄写す

ハノイから車で8時間。中国と接するベトナム・モンカイ市ではやたらと漢字が目につく。2カ月前にできた高層のショッピングモールの1階にも漢字で「本店購物可使用人民幣及越南幣」。この店では中国の通貨・人民元でもベトナムのドンでも買い物ができる、という意味だ。

周辺は数千人が働く露店の市場。フックさん(50)の雑貨店で折りたたみ傘の値段を聞くと、「12元(約170円)よ」。1カ月に1度、中国側で品物を仕入れる。業者への支払いは元。客から受け取るほか市場内の両替商からいくらでも手に入る。「最近は元で払う客が増えたわ」

国境の反対側、中国広西チワン族自治区・憑祥(ピンシアン)市。ベトナム国境近くの銀行の支店前には、いすに腰掛けた女性が6、7人並んでいた。「替えてあげるよ、いくらでも」。カバンの中には元とドンの札束。銀行は受け付けない両替に応じ、貿易の決済も引き受ける。ただ、中国側ではドンは歓迎されないようだ。陶器店を営むチワン族男性(62)は「値下がりがひどいから、誰も欲しがらないよ」。

中越戦争を経て両国の国境で人とモノの往来が再開したのは89年。中国政府が周辺諸国との国境貿易で元の使用を本格的に認めたのは03年だが、90年代からヤミ両替商を介してベトナム側で元の流通が拡大。ベトナム政府は国境近くの一部地域に限り、徐々に規制を緩和して04年には正式に元の流通を認めた。

ベトナムではドンと並んで米ドルも流通する。しかし国境地域では元の利用が急速に進み、今やベトナム人同士が日常的に使う通貨だ。そして中国との貿易の拡大とともに政府の想定を超えて広がる。

Tky200908010315_2国境から数百キロ離れた都市で飲食店を営む日本人男性は月に1度、ハノイのヤミ両替商に顔を出す。顧客から受け取ったドンを元に替え、中国から輸入する野菜や魚介類などの支払いにあてる。「モノと通貨に関する限り、ベトナムは、もはや華南地区の一部だ」とこの男性は言う。

Tky200908010316通貨の力は国力を映す。元の拡大は、中国の影響力が拡大するということだ。中越間で徐々に太くなる元の流れ。それを広範囲に拡大する動きが中国側で始まった。

7月3日。インドネシアの自動車販売会社から上海の部品メーカーへ、輸入代金がこれまでのドルではなく元で払われた。販売会社の依頼で中国工商銀行のインドネシア法人が約37万元の信用状を発行し、決済にあてられたのだ。

中国政府は昨年末、温家宝(ウェン・チアパオ)首相が主宰する会議で、上海など長江デルタ地域・広東省・広西チワン族自治区・雲南省と、香港・マカオ・東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で、貿易の支払いへの元の使用を試験的に認めると決定。インドネシア企業との決済は、その第1弾だ。

一方で中国は昨年12月以降、韓国やインドネシアなど六つの国・地域との間で、元と相手国通貨を交換する通貨スワップ協定を相次いで結んだ。相手国に元を融通し、中国からの輸入品の代金支払いに使ってもらう狙いだ。

世界的な金融危機で、米国とドルに対する信認は揺らいだ。8千億ドルの米国債を抱える中国には切実な問題だ。ドルに頼る危険性は、ほかのアジア諸国も認識している。

「金融危機は元の国際化にとって一つの好機だ」。アジア地域の貿易に詳しい高歌・広西民族大教授はこう話す。

元の台頭、迎え撃つ円

昨年10月、タイのスチャート財務相(当時)と中国の李勇財務次官がワシントンで向き合った。国際会議でともに米国入りしていた。

「ドルを拠出し合うのではなく、域内の通貨で構成する『アジア通貨基金』を作ったらどうか」。スチャート氏はこう切り出した。

Tky20090801031897年のアジア通貨危機以降、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国は「チェンマイ・イニシアチブ」(CMI)という枠組みを作った。いざという時に各国の外貨準備からドルを出し合い、投機の対象になった国がそれを借りて自国の通貨を買い支える仕組みだ。

スチャート氏の提案は、ドルではなく、人民元と円を中心に基金を設立しようというものだった。

中国側は聞き流したが、タイが提案したのはドル依存の危うさを感じているからだ。アジア通貨危機で急激な資金流出を経験したタイなどは、経常黒字国への転換を急ぎ、ドルを中心に外貨準備を積み上げた。危機を繰り返さないための方策だったが「我々が米国債を買ったことで米国に資金が流れ、バブルをもたらした」(アチャナ・タイ中央銀行副総裁)。各国がドルをため込む通貨安定策は見直しを迫られている。

ドルに頼らない新たなアジアの通貨秩序を作るとしたら、その中心は元か、円か。スチャート氏は「どちらが主役になるかは今後の両国の経済規模次第だ」と語る。だが原案を練ったソムチャイ主計局長は「我々は元の国際化を支持する。基金の本部も東京ではなく北京が望ましい」。

日本企業は80年代以降、タイへの進出を加速させ、外国企業では圧倒的な存在感を示してきた。しかし中国もプレゼンスを高めつつある。もともとタイには華僑が多く、政財界には中国への親近感がある。そのうえ経済外交における日本のイメージは良くはない。貿易交渉ではコメ市場の開放などで譲歩しないため主導権をとれず、通貨でもいざとなれば米国には逆らえない、と見られがちだ。

台頭する元と迎え撃つ円。主導権争いはすでに始まっている。

「日本384億ドル、中国384億ドル、韓国192億ドルでどうでしょうか」

5月3日、インドネシア・バリ島で開かれた日中韓の財務相会談。CMIの拠出割合について、議長国・日本の与謝野財務相がそう提案した。中韓の財務相が同意すると、同行していた日本の財務省幹部らに安堵(あんど)感が広がった。

「日中同額で中国が本当に同意するのか。内心は少しビクビクしていた」。幹部の一人は振り返る。

現行のCMIは、2国間協定の寄せ集めだが、今年2月、危機に陥った国に他の参加国が協調して資金を融通する多国間協定に変えることが決まった。合意した総額は1200億ドル。うちASEAN諸国が計2割、日中韓が8割を負担することになった。だが、その後の日中韓の交渉、とりわけ日中の拠出割合をめぐる協議は難航した。

CMIは、アジアの金融協力の要だ。拠出するのはドルだが、そこへの拠出割合は「今後のアジアにおける様々な物差しになりうる」(財務省幹部)。

日本はこれまで世界第2の経済大国として、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などへの出資額で中国に大きな差をつけてきた。CMIでも、現状の2国間での融通額の合計は400億ドル(約3兆8千億円)前後と、中国の2倍以上。多国間協定に変える際の拠出額の割合もその合計額を基準にすべきだ、というのが日本の考えだった。

中国側も日本を上回る拠出額を主張した。根拠は今や日本の2倍、2兆ドルを超える世界一の外貨準備高だった。

日中が譲らず決着期限だったバリ島での会議が迫った。妥協の道として日本側が示したのが「日中同額」。日本側には「不本意」という声もあったが、同額には成長する中国の頭を抑える狙いもある。「中国をわずかに上回る額で押し切ることも、できたのかもしれない。だがそうすると、今後さらに中国が大きくなった場合、逆転される」(財務省幹部)。中国の国内総生産(GDP)が日本を超えるのは今年か来年か、目の前だ。

「日中同額」は、日本がリードしてきた通貨外交で力関係が逆転する予兆となりそうだ。

     ◇

中国は通貨で覇権を握ろうとしているのか。広西民族大の高歌教授は「スポーツと同じ。まずはアジア大会に出て、それから世界大会だ」と話す。アジアで地域通貨の立場を確立し、その後、ドルのように世界で通用する通貨を目指すことになる、という。

だが中国が7月から始めた上海など一部地域とASEANなどとの間の貿易を元建てで決済する試みは、当局に管理された実験に過ぎない。地域が限られているうえ、中国人民銀行(中央銀行)などの審査に通った一部企業だけに対象も限定されている。アジア域内でさえ元の自由な売買を認めたわけではない。「アジア大会」出場すらまだ遠いのが現実だ。

中国は今なお、海外との資本取引を厳しく規制しており、元は国境を超えて自由に行き来できるわけではない。為替市場も人民銀に管理され、元の対ドル相場はここ1年、ほとんど動いていない。

村瀬哲司・龍谷大教授は「資本取引を自由化すれば投機にさらされる可能性がある。変動相場制への移行は元の切り上げを招き、経済の安定成長に影響を与える。どちらも中国政府にとってハードルは高い」と指摘する。資本取引の自由化には、国内金融システムのさらなる健全化も必要になる。

「通貨をめぐる今の中国の状況は日本の1960年代後半ぐらい」(日本の民間シンクタンク)。98年の新外国為替法施行で通貨の自由化をひとまず終えた日本の歩みに照らせば、残る道のりは長い。人民銀も「元がすぐに完全な国際通貨になれるとは思わない」(蘇寧・副総裁)と、課題が少なくないことを認める。

東南アジアの側にも元の拡大に抵抗がないわけではない。関係者によると、ベトナム政府は、中国政府から元のスワップ協定を結ぶよう要請されたが、「検討する」との回答にとどめているという。

ベトナム発展研究所のレ・ダン・ドアン研究員は「英ポンド、米ドルの歴史を見れば、通貨で覇権を握ることは政治的な覇権につながる。とても民主的とはいえない中国の影響下に、やすやすと入るわけにはいかない」と話す。

急成長する経済の力を背に台頭する元。だが中国が経済面でも政治面でも変わらない限り、まだまだ元が世界で広く受け入れられるようにはならない。(高野弦、琴寄辰男、生田大介)←引用終わり
(朝日新聞社asahi.com)

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