工作機械生産額で中国が首位に立ち、日本は3位に転落!
このニュースというかネタは、一見地味に見えるし聞こえるが、生じた事態の深刻さはチョッとしたモノがある。
「工作機械」っていうのは「工作ロボット」でもある。
工作機械の優秀さは、工業生産に影響を与えるし、平均的で標準的な「汎用製品」の生産はそれにより多くが支配される。
日本で生産される工業品の多くが、効率よく均質(高品質)に生み出されるのも、それぞれの生産品に適合するよう工作機械が一定の水準を保つからである。
「工作機械」は、国内生産に対処する形で生み出されるが、その機械のレベルが高ければ「輸出」もされる。
日本がその技術を誇り続けた「工作機械」の生産で、中国に追い越された事は深刻である。
それは、日本の消費市場で求められるモノが、中国で生産される「工作機械」で満足するレベルになった事の証でもあり、あるいは、中国が生産する「工作機械」のレベルが、日本が生産してきた「工作機械」のレベルに並ぶか凌駕しつつある事を示したと考えるべきだ。
例えば、汎用消費材の生産に当たる「工作機械」の生産で中国に追い越されたから、「工作機械」全体の生産額が落ちたのだ、という議論が提起されるかもしれない。
それは一定程度の意味があると考える。
中国の工業生産が、多国籍企業の「直接投資」により、「汗」に象徴される単純労働の提供で工業生産を拡大し、「輸出市場」を見出した結果として「所得」を高めた事を受け、中国も国内市場が成熟している事を示唆しているワケだ。
中国の消費市場(内需)が着実に伸びているから、国内産業向けの「工作機械」も輸入または輸入代替品から「中国」で生産される「工作機械」にシフトが進んでいると考えられる。
やがて量産を経験する事で、技術の改善や改良を行い「工作機械」でも「輸出市場」を確実に入手する事だろう。
その時に、中国は「汗」に象徴される労働から、「頭脳」に象徴される労働へ質的に転換するワケである。
ドイツは、なぜ2位の座を守れたのか?
これについて、真剣に考えてみる必要がある。
ドイツの「工作機械」は、何を以て2位の座を守っているのか?
まず「日本」が弱体化し追い越された理由は、日本の「輸出」「内需」が、ともに不振である事が一番の理由だと考える。
(内発的要因として国内市場を活性化させない限り回復できない)
日本は、主としてどの分野「工作機械」が弱体化しているのか?
それに代わる「工作機械」は、どのような技術で市場なのか?
その開発には、何が必要なのか?
(外発的要因として様々な輸出市場における勝因分析が不可欠だ)
日本の教育は、「情緒的な思考」やそれを賛美する風潮に流され、「過度な平等思考」に覆い尽くされている。
「論理的な思考」やそれを推奨する風潮は衰微する一方である。
世界の歴史の中で「自らモノを生産する力」を欠いた国や民族が、長く繁栄した事は無い。
最も身近で象徴的な事例は、カンボジアの主流である「クメール」であると指摘しておこう。
クメール族は、中世に「アンコールワット」「アンコールトム」に表徴される、巨大な石造寺院を建設した。もちろん建設を支えた労働力は周辺各国(地域)から徴用された奴隷労働が中心を占めたと考えられている。
しかし何よりも重要な事は、「設計能力」と「技術能力」が一定程度備わっていなければ、労働力を得ても「アンコールワット」「アンコールトム」などは、建設できないのである。
当時の日本へも、その偉容は伝えられ聞こえた事もあり「祇園精舎」と信じられたと、いくつかの古文書に記されている。
「アンコール」の巨大石造寺院を建設したカンボジアは、その後ご承知のように衰微した。
なぜ、カンボジアは衰微し今日に至ったのか?
一次産品以外の「消費財の生産」を隣国の「タイ」や「ベトナム」に依存したと考えられている。
「輸出」「輸入」であろうが「移出」「移入」であろうが、対象国や対象地域、あるいは対象者が、なんら一切の「生産手段」を保持せず、「手元資金」だけで、周辺諸国(地域)から「輸入」「移入」を繰り返し続ければ、財政的に破綻し「資金」を失うのは日を見るよりも明らかだ。
これまでは、「米国」の姿が中世の「カンボジア」に見えて仕方がなかったが、最近は、「日本」の姿が中世の「カンボジア」と重なり見えて仕方がない。
日本は、何よりも「技術教育」に力を注ぐべきである。
「技術立国」という言葉が主張された時期があった。
いまはどうか?
「消費」しよう!「消費」が美徳だ!
という主張が主流になって久しい。
「消費」するための「カネ」はどこにあるのか?
この点を、日本、特に(無責任な悪徳)官僚や、お為ごかしの(無責任な悪徳)政治屋は、真剣に考えるべきである。
引用開始→ 中国首位 日本28年守った座から転落 工作機械生産額
(asahi.com 2010年3月22日2時21分)2009年の日本の工作機械生産額は、前年比56・5%減の58億8890万ドル(約5300億円)と大幅に落ち込み、1982年以来続いていた生産額世界一から3位に転落した。首位は成長が著しい中国、ドイツは2位を維持した。
米調査会社ガードナーの調べをもとに日本工作機械工業会がまとめた。
中国は、主要国の生産額が世界同時不況で落ち込むなか、同8・9%増の109億5千万ドルで、前年の3位から一気に首位になった。ドイツは同35・2%減の78億2160万ドルだった。日本は82年に米国を抜いて首位となり、世界のものづくりを支えてきた。
工作機械は、金属部品などを削って加工する機械で、その生産状況は設備投資の先行指標とも言える。中国は政府の景気対策効果も後押しし、不況からいち早く立ち直った。一方の日本は内需の回復が遅れ、円高で輸出も厳しいままだ。最近は生産が回復しているが、「中国の需要など輸出主導の回復で、国内の需要はまだまだ少ない」(日本工作機械工業会)という。←引用終わり
(朝日新聞社asahi.com)
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