ベトナム市場の原発受注、日本人が勝手な幻想を描くほど「甘くない」
1986年にベトナムが政策転換を果たしドイモイ政策(あらゆる政策を刷新する)を採用した。
それ以降、ベトナム外交の基本は「全方位外交」である。
国際社会でどの国とも仲良く交流する。それを通して国際社会に自国を位置付ける外交を均等に進める。それが自国の安全を保障する最も有効な鍵である事をベトナムは知り尽くしている。
ベトナム政府が、工業化を推進するために「原子力発電所」の建設を発表したとき、ハノイやホーチミンに滞在または駐在する日本人の多くが、「ベトナムが『原子力発電所』を建設するなんて何を考えているのだ」と一斉に批判の声を上げた。
その一方で、彼らは空調機を使い電力消費に余念が無く、少しでも停電すると「これだからベトナムはダメなんだよ」と罵倒する事も忘れなかった。
あるいは、自分が関わる工場で停電(計画的な停電)があれば、生産計画が狂ってしまうと非難のボルテージを必ず上げる事を忘れない。
そんなこんなで、ベトナム政府が水量と落差を利用できる「水力発電所」の建設を北部で発表すると、自然を破壊する行為は止めた方がヨイと必ず「批判の声」を上げる。
「原発」に日本が賛同すると、この国(ベトナム)に「原発」は合わないと高見からモノを言い厳しく批判(内政干渉)する。実に困ったヤツラである。
「基本的に外国人は当事国の内政に干渉しない」これが国際社会の原則である。
しかし、ベトナム政府は断固として「原発推進」の姿勢を明確にする。
すると経団連に集まる「重電会社」は、ベトナムでの「原発」受注をテーマに掲げ、各社がベトナム政府へ激烈な攻勢をかける。
原発は、フランスが高度な技術力を保持している。
ロシアも同様に高度な技術力を保持している。
この両国は「原発」での先進技術を保持する国だ。
ベトナムはフランスと固い友好関係を築いている。
(占領支配され、打破に向けて戦火を交えても、終われば友人だ)
ベトナムはロシアとも強い友好関係を築いている。
(ベトナムが、米国との戦争を強いられた際、ロシアは一貫して支援)
日本が、ベトナムを友好国として捉え返し国交強化に動いたのは、この20年ほどでしかない。この間に出遅れを回復させる目的や、対中国戦略や政策の必要性から、その度合いを一気に強め高めたワケである。
ドイモイが始まって5年を経過した頃(1992年頃)にベトナムに在住する日本人は100人に満たない程に過ぎなかった。アジア通貨危機が起きた1997年以降に日本とベトナムは真剣に向き合い友好を高める事を探り合った。
2000年代に入り、日本はベトナムに対しようやく真剣に向き合うようになった。
フランスは、一貫してベトナムで存在し続けた。
ロシアも同様である。
理由を知りたければ、ベトナムの歴史(正史)に当たる事をお勧めしておく。
日本は、ベトナムにチョッカイを出した事で、当時の国際社会で決定的な孤立を招き「第二次世界大戦(太平洋戦争)」へ突き進む事になった。
この点も含めて、日本人は深く理解する事が必要だ。
最近は、「原子力発電所」、「高規格鉄道(新幹線)」建設などの政策発表があると、基本的には「日本の企業」が受注できる(する)と決めてかかる傾向が強い。
誰が、何を根拠に口にしているのか?
ベトナムは、基本的に「微笑み」を大切にする国である。
それは「お世辞」が巧く見事ですらある。訪問者を傷つけない事を基本に据える国である。
一々、一つひとつ「真に受けていたら、何も見えなくなる」事だろう。
今回の原発事業は、様々な点について総合的な戦略性に基づく思考力を全く欠いているとしか言いようがない。
だから、「首相が親書を送る」という策を献じる事になる。
これは、場合によれば「嗚呼、究極の愚策」に陥るかも知れない。
首相が、首相に、お手紙を差し上げれば「事態を打開」できると、要請(献策)考えたのであろうが。
全体を見る事が出来ない目を治療し、おかれている状況や環境の透徹可能な目を養う方がよいと考えるが、言っても仕方がないので、「何も言わない」。
しかし、難しい策にはその事実を指摘すると共に徹底した批判を加えておきたい。
引用開始→ 鳩山首相、原発トップセールス ベトナム首相に親書
(asahi.com 2010年2月27日22時13分)鳩山由紀夫首相は27日、ベトナムの原子力発電所の建設事業を日本企業に受注させるため、グエン・タン・ズン首相に親書を送る意向を明らかにした。日本企業の優れた技術力や政府の支援態勢を説明し、官民が連携して売り込みを図る。視察先の高知市で記者団の質問に答えた。
首相は、「ベトナムは原子力(発電事業)に力を入れると聞いている。日本としても、政府がもっとこういったものに力を入れて、原発(建設の受注)を全体として調整できるような仕組みを作り上げたい」と表明。ベトナム首相への親書を通じてトップセールスで売り込みをかける意欲を示した。
経済成長に伴う電力需要を賄うため、ベトナムでは沿岸部2カ所で100万キロワット級の原子炉4基を建設する計画が進んでいる。2020~21年の第1期と21~22年の第2期に2基ずつ稼働させる計画で、総事業費は1兆円を超える巨大プロジェクトだ。
第1期事業はロシア政府が強力に後押しした同国企業が受注する見通し。第2期もフランス企業などと競合する。
海外の社会資本整備事業をめぐっては、仙谷由人国家戦略相が、日本の官民が連携して受注を目指すことを「成長戦略」と位置づけ、アジア地域などで取り組みを強化することを表明している。
また、首相は今年5月に開幕する上海万博について「いつかの時点で拝見したいなという思いはある」と述べ、万博の開催期間中に訪中する意欲を示した。(今野忍)←引用終わり
(朝日新聞社asahi.com)
引用開始→ ベトナム原発売り込み、鳩山首相トップ営業へ
(2010年2月27日14時41分 読売新聞)鳩山首相は27日、ベトナムで計画されている原子力発電所建設事業での日本企業の受注獲得を目指し、自らトップセールスに乗り出す方針を固めた。
週明けにグエン・タン・ズン首相に親書を送り、日本の原発の売り込みを直接訴える。
新興国を中心とする海外の原発受注競争は年々激化しているが、日本勢は昨年末、巨大事業となるアラブ首長国連邦(UAE)の原発建設で韓国企業に敗れた。ベトナムでもすでにロシア勢に後れを取っており、巻き返しには政府の強力な後押しが必要だと判断した。
ベトナムの原発建設事業のうち日本が受注を目指す工事は、建設費だけで7000億円以上が見込まれ、その後の維持費や燃料供給などを含むと1兆円規模の事業になるとされる。
首相は親書で、円滑な原発技術の移転ができるようベトナムとの原子力協定の締結交渉を早期に開始することを打診する。また、「日本の関係企業が総力を結集する新しい体制を構築する」とし、ベトナムでの受注に向け、日本の官民が連携する新体制を整備する考えを表明する。
具体的には、政府が、東京電力や関西電力など民間企業と共同で、海外の原発の事業化調査を請け負う新会社を設立することを検討している。
首相は、親書を手始めに、ベトナム側の反応を見極めながら、ズン首相との電話会談や首相特使の派遣などを行い、働きかけを強めたい考えだ。
政府が受注を目指すのは、ベトナム南部ニントゥアン省で計画されている第2期工事の原発2基。すでに第1期工事の原発2基は、ロシア企業が受注したとみられ、第2期工事でも、フランスなどと競合している。
アジアの新興国などが進める原発建設事業をめぐっては、各国政府が自国企業を後押しする国家対抗の受注合戦が過熱しており、日本でも、官民連携による取り組みの必要性が指摘されていた。政府は、ベトナムなど海外の原発事業を積極的に受注することで、日本の経済成長につなげたい考えだ。←引用終わり
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