日本は、パキスタンの洪水被害で、何ができるか、何を為すべきか?
日本がおかれている国際関係の立ち位置を含め、日本が口にする「(平和を遵守した)国際貢献」についての「決意と覚悟」が問われようとしている。
以下は、別のスレッドで述べた見解だが、少し字句を補強した上で再掲しておきたい。
お考え頂ければと切望する。
海外出張中の滞在っていうか仮寓での生活は緊張する。
当日のまとめと翌日の準備に手間暇が必要な事が第一だ。
毎回の食事も情報交換の延長にあり、どちらかと言えば接待っていうか付き合いになるため時間がかかる。
何よりも業務処理が先決であり終わると疲れ果てる。
海外出張も、一箇所固定の長期出張なら生活のリズムを確立できるが、暫く滞在し次へ移動するパターンは連続した緊張を強いられる。気持ちの上では基本的に厳しい状況が続く。
追い詰められるワケではないが、例えばシャワーが思いどおりに出ないなどにより小さなストレスが連続的に積み上がるから心理的な負担は大きい。
今はあまり見かけなくなったが、少し前には、海外出張中にパンクしてしまう人を見かける事もあった。
手を差し延べるにしても、相手(その人)のプライドを傷つけないようにと考えると難しい。
何よりも、その人物の「人となりが」よく分からないのだから。
このように考えると募集型で添乗員に率いられる団体旅行者を見る度に「平和で幸福」だなぁと眺めていた。
極端な発展途上国や紛争地域へ出向く時は、それなりの覚悟(より以上の決意)が必要だ。
いまパキスタンの辺境州が襲われた「洪水被害」救援に自衛隊派遣が検討されているようだ。経験を述べると、基本的にパキスタン政府の支配が及ばない地域へ足を踏み入れる時は、殊の外、緊張を強いられる。1995年に初めて行った時の決意っていうか覚悟と緊張は極限だった。
その後、カシミールへも足を踏み入れたワケだけれど、フンザを中心にヒマラヤは「K2」の麓に拡がる地域は一転してパラダイスであり「桃源郷」だった。
それでも宿舎では気を緩めなかった。
インドと領有権を争う地域を抱えるカシミールでは係争地はもちろんインド国境へ近づくにつれ緊張を強いられた。
「K2」の峰が屹立するように人も屹立するからだ。
2005年10月に発生したパキスタン北部地震で、カシミールの桃源郷で友人になり、いろいろ世話をして貰った数人が犠牲になった事を、その後、判明したと知らされた。
人の生命は実に儚いモノだ。
地震は、瞬時に、一族でカシミールの緞通を織りながら家族を養う敬虔なムスリムであった彼らの生活を破壊したようである。
冷静にパキスタンを眺めると、中央政府は首都のイスラマバードと隣接するラワルピンディー、南部の商都カラチ、中北部インド国境の文化都市ラホールを中心にした都市とカシミール地域を含む一部の地域を支配しているだけではないか?
他の地域や小都市は地元に根ざした独自の政権があるように思えて仕方がない。
部族政権である事も含め。
日本は、パキスタンから「綿花」を買い入れている。綿紡績事業者の縮小撤退により年々減少しているが「インド綿」は「パキスタン綿」である。
欧米諸国向けの格安ジーンズの多くはパキスタン製である。
リーバイスも、ドッカーズも、ギャップも、ヘインズも低価格ラインの製品をパキスタンで製品化しデリバリーしている。
地政学的にパキスタンは、インドとアフガニスタンに挟まれている。
「タリバーン」壊滅作戦を理由に米軍駐留を受け入れた事で、部族社会が支配する辺境地域では中央政府の威信は低下傾向で統治機能が行き届かない。
パキスタンは、核兵器を開発保有した事で中央政府が崩壊するとイラン以上に危険な状態(いまも危険)になる。
タリバーンもアルカイーダもそれに狙いを定めている!
パキスタンの洪水被害救援に向けた、自衛隊ヘリの派遣は、日本の覚悟というか外交能力が真底から問われるといえる。
国際社会の何を守るのかに「決意」や「覚悟」は直結する。
カラチのホテルでガードを担当する者が軽機関銃を抱えている事を忘れてはいけない。
丸腰または武器使用で手足を縛った自衛隊派遣は、戯言の「観念的平和論」に過ぎない。
勿論、米国が疲弊している事がある。韓国人の国連事務総長は救援に必要な資金が全体の27%の集まりでしかないと、国際社会へ更なる拠出を呼び掛け、カネもヒトも技術も提供して欲しいと強く求めているワケだ。
米国は安定しないイラクを含めアフガンとパキスタンで退くに退けず満身創痍である。
日本の覚悟が問われている!
憲法9条を楯に、専守防衛を金科玉条の如く唱え続けた観念的な政治勢力と日本国政府、それに縛られ続けた自衛隊。
国際情勢は日本人の想像以上に複雑怪奇だ。
日本の貿易相手は世界各国に及びそれに伴いODAも急拡大した。
今度はカネ以外のパワーを求められているが、折りから日本の財政は答えられる余力無しである!
ドロ沼の国際社会へ自己犠牲を厭わず、足を踏み入れるのも自由である。
尻尾を巻いて逃げ出すのも自由である。
そんな中、朝日が社説でお得意の「知的お説教」を垂れている。
確かに「お説、ごもっとも」であり、実にご立派な優等生の見識というほかない。
さすがに築地の社屋は、さぞ涼しい事であろう。
引用開始→ パキスタン洪水―危機の連鎖を止めよう
(asahi.com 朝日新聞社説 2010年8月17日(火)付)政治がしっかりしていない国が大災害に見舞われる。被災者に十分な救援の手が届かない。人々の不満が募る。政治不信が一段と強まり、社会がさらに不安定になる。そこにテロをためらわない過激グループがつけいる……。
パキスタンの大洪水に、そんな悪循環への懸念がふくらむ。アフガニスタンとともにテロとの戦いの最前線に位置づけられ、核保有国でもある。日本を含め国際社会も協力して、危機の連鎖を食い止めなければならない。
北西部を7月末に襲った豪雨は、1947年の建国以来最もひどい被害をもたらしているという。インダス川沿いの国土の3分の1近くを水に浸した。1600人が死亡し、200万人が家を失った。政府は、全人口の9分の1にあたる2千万人が被災したと見ている。今後も豪雨が予想されるなか、コレラも発生している。
農業中心で膨大な貧困層を抱える。2008年の世界金融危機で打撃を受け、国際通貨基金(IMF)の融資で息をつないでいる経済が、さらに苦しくなるのも確実だ。
本来なら政府が、救援活動と危機管理に全力を挙げる場面だ。なのにザルダリ大統領は、洪水発生後も英仏へ外遊し、フランスでは親族が持つノルマンディーの大邸宅訪問などに時間を費やす有り様。対策は後手に回り、国民の強い不信を招いている。
被害を克服できず、経済と社会の混乱が深まるようなら、軍がクーデターを繰り返してきたこの国の宿痾(しゅくあ)のような政情不安が頭をもたげかねない。
それは、アフガンとの国境地帯周辺に浸透する国際テロ組織アルカイダなど過激派を大きく利する。両国の安定化でテロの脅威を除こうとする米国の戦略にも手痛い打撃となる。
もちろん被害の克服に最大の責任を担うのはパキスタン政府だ。野党、軍も一体となって取り組むべきだ。そしてそれを国際社会が支援する。だが、同国への支援は、多くが汚職に消えるといった批判が絶えない。国連が求める4億6千万ドルの緊急支援への国際社会の反応が鈍いのも、このためだ。
この批判を、パキスタン政府は真剣に受け止め、支援を厳正に執行する手だてを尽くす必要がある。現政権を支援してきた米国も強く促すべきだ。
南アジアでは洪水や干ばつが恒常化しつつある。気候変動への危機感から印パ、アフガンなど8カ国でつくる南アジア地域協力連合(SAARC)は、災害の早期警戒などで連携を模索し始めている。
日本はパキスタンに緊急資金協力を表明し、陸自ヘリの派遣も検討中だ。それにとどまらず、自然災害対策で有数の先進国であることを生かし、SAARCの動きを後押しすることも考えてはどうだろうか。←引用終わり
(朝日新聞社asahi.com)
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