JR大阪駅 新装(五代目)開業 50万人が押しかけたとか
JR西日本が、総力を挙げというか、社運を賭けというか、未来を切り拓く願いを込め、最大の拠点「大阪駅」の大改造を続けてきた。
5月4日開業に漕ぎ着けた。
大阪駅の改良懇談から12年。
改造の基本構想を発表してから8年。
工事着手から4年。
一日の乗降客数85万人を抱えたまま大改造に着手。
この間、利用者が強いられた「不便」は数限りがない。
日常的に繰り返された通路変更、券売機の移設、みどりの窓口の縮小移転、駅構内の商業施設の配置換えなどが続いた。
2011年3月のダイヤ改正(九州新幹線全通と山陽新幹線乗り入れ)に合わせ開業する予定だったが、「福知山線列車事故」を考え遺族への配慮を心がけ5月4日を開業日と選択したワケだ。
まぁ、ナンて言うか、3月に開業しなかったコトの影響なんて長い年月の間には掻き消されるだろう。
しかし、5月4日の開業は商戦としてはギリギリの選択だ。
連休後半は「夏物商品」の商戦がピークで時期的にはむしろ下降気味の時期といえる。
この時期を逸するなら、商品展開の上からは「秋に開業」する方がよい。
何かと話題を集め注目される「三越伊勢丹」だが、ヨドバシカメラ(元「大阪鉄道管理局」跡地)を巡り、大阪駅前への進出を念願としていた「三越」は、売却入札に手を挙げヨドバシカメラとの一騎打ちで惜しくも敗れた。
一方、民営化されたJR西日本は流通部門の開発を宿願として、JR京都駅の大改造に合わせ「JR西日本伊勢丹」を開業し、一定の売上高を確保するようになった。
その後、「伊勢丹(三菱銀行)」と「三越(三井銀行)」が主力銀行の壁を越え「経営統合」を発表した事で、大阪駅の大改造に「JR西日本伊勢丹」が出店するワケだが、「伊勢丹」と「三越」の経営統合を受け「JR西日本三越伊勢丹」というナンとも長い名称の百貨店業態が出現する事になった。
「三越」側の関係者としては、宿願だった「大阪駅」に名前だけとはいえ「三越伊勢丹」としての出店を確保したというワケだ。
実態は「伊勢丹」そのものだ。
公表された店舗面積は5万平方mで、当初の年商は550億円、一坪当たり年363万円。
控えめな数字にみえるが、「京都」での経験を踏まえ堅実な数値を弾いているといえる。
むしろJR西日本SC開発が手がける2万平方mの専門店街「ルクア」に注目したい。
これまでJR西日本管内では、本格的なファッション商品を扱う駅直結の「駅ビル業態」はなかった。
いわゆるJR東日本の「ルミネ」「アトレ」に相当する「ファッション専門店集積SC」を持たなかった。
JR大阪駅に直結する「ルクア」が、どの程度の売上を獲得するかに注目したい。
大阪を軸にした関西地域は、JR西日本が「ファッション専門店集積SC」を本腰を入れて手がけなかった事で、域内の百貨店業態や都心商業施設はそれなりにポジションを得ていた。
しかし、JR大阪駅で「ルクア」が成功を収めると、徐々にその成果を波及させる事を経営の軸に置く事は常道である。
JR西日本SC開発は、遊びで「ルクア」を手がけるのではない。
JR西日本が企図する今後の展開を左右するため、それを担当する人材の総合能力が問われるともいえる。
JR西日本は、今後の環境論や少子高齢化社会を見据えるなら、都市は高度化と重層化を進展させると捉えているのではないか。
都市が高度化と重層化を進めれば進めるほど、巨大ターミナルは高度化と重層化に対応した都市サービスの拠点としてのポジションを高めると想定している思う。
その狙いも含めたダイヤ改正が2011年3月に実施されている。
現在、大阪駅の利用者は一日平均85万人(公表)である。
これを90万人に増やす(獲得する)ため、和歌山方面、奈良方面からの快速電車を全て大阪駅へ乗り入れさせる。
また、東海道・山陽本線(神戸線・京都線・びわこ線)の新快速電車について休日も全て12両編成で大阪駅への誘導を講じている。
新快速電車の通常運転区間は「姫路=野洲または米原」で、最長運転区間は「播州赤穂=敦賀」で300キロを超える。
新快速電車の大阪=姫路の所用時間は60分。
新幹線の新大阪=姫路の所用時間は30分だが、新大阪から大阪駅まで在来線での移動が必要だ。
いきなり商圏の空間を時間距離の面で拡大した。
JR大阪駅を軸とした「梅田」が注目され脚光を浴びるのは、時間距離の短縮による商圏の空間が突然拡大し、まだ拡大できる余地があると考えられるからだ。
(この点は、博多駅+福岡天神も同様)
JR西日本は、平日に通勤通学客の輸送を使命とし、休日には買い物客や行楽客を各地へ輸送する事を使命としていた。
JR西日本の収益は、①山陽新幹線、②大阪環状線、③京阪神を結ぶアーバンネットワークといわれてきた。
そこで四番目の収益事業として本格的な構築に取り組んだワケで、④都心ターミナルでの商業開発がそれに当たる。
これからは、従来どおり平日の通勤通学客、休日の買い物客・行楽客を輸送し続ける一方で、自社の存続に向け開発した商業空間への誘客に向け本格的な取り組みを広域で行う事になるだろう。
JR西日本の各線を利用し続けて貰う仕掛けが必要なのである。
もちろん、開発した商業空間が成功を収めなければ、構想は「画に描いた餅」に終わる。
それだけの戦略や期待に応えるべく能力を発揮できるかは、関係者の資質はもちろんだが現場で従事する一人ひとりの能力に負う要素が大きい。
それらを総合し、JR西日本は「JR大阪駅」の大改造に社運を賭けたと言っても過言ではない。
引用開始→ JR大阪三越伊勢丹開業 行列長く異例の45分繰り上げ
(産経MSN2011.5.4 11:14)JR大阪三越伊勢丹(大阪市北区)が4日、JR大阪駅北側のノースゲートビルに開業し、百貨店業界史上、最大といわれる競争が幕を開けた。同店には朝早くから多くの客が詰めかけて行列が長くなったため、異例の45分繰り上げの開店となった。
梅田地区では三越伊勢丹の新規開業のほか、阪急百貨店梅田本店や大丸梅田店の建て替え、増床などで百貨店の売り場面積が従来のおよそ1・8倍に膨れ上がり、「世界一の激戦区」(ジェイアール西日本伊勢丹の松井達政社長)になる。
大阪三越伊勢丹は5万平方メートル。初年度売上高の目標、550億円は「低めの設定では」(百貨店関係者)との指摘もあるが、松井社長は「イセタンは新参者で知名度がない」と慎重な姿勢を見せている。←引用終わり
© 2011 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
引用開始→ 改装JR大阪駅を挟む「ステーションシティ」、全面開業
(2011年5月5日 読売新聞)JR大阪駅の新駅舎と駅北側のノースゲートビルディングが完成し、駅一帯の再開発地区「大阪ステーションシティ」として4日、全面開業した。大阪駅は約30年ぶりの大規模改装で、橋上駅舎を設けて、南北の商業施設へ行き来しやすいようにした。低迷する関西経済の活性化に向けた起爆剤として期待される。
新しい大阪駅は1874年に完成した初代駅舎から数えて5代目。橋上駅舎の上に南北をつなぐ「時空(とき)の広場」(東西37メートル、南北83メートル)があり、ドーム状のガラス屋根で覆われている。駅の1日の乗降客数はこれまでの85万人から90万人以上に増えると見込む。大阪市の女性会社員(50)は「きれいな駅になって、印象が変わりました」と話した。
ノースゲートビルは地上28階、地下3階で、梅田地区で4店目の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」や専門店街「ルクア」が入る。3月に完成した大丸梅田店などが入る南側のサウスゲートビルディングと合わせ、延べ39万平方メートルの巨大な駅ビルになった。
東日本大震災の被災者らに配慮し、開業式典は開かれなかったが、三越伊勢丹やルクアにはこの日、買い物客ら延べ約50万人が訪れた。開店前に計1850人が行列し、三越伊勢丹、ルクアとも予定を45分早めて9時15分にオープンした。
JR大阪三越伊勢丹は売り場面積が約5万平方メートルで、2008年に経営統合した三越と伊勢丹が両方の名前を付けた初めての店だ。伊藤達哉店長は「日本経済は厳しい状況だが、大阪から日本を元気にするという意気込みで運営したい」と話した。ルクアには若者に人気のファッションや食品など198店がある。
JR西日本は総事業費2100億円をかけて04年から段階的に工事を進めてきた。サウスゲートビルの開業で、大丸梅田店の売り場は1・6倍に増えた。阪急百貨店梅田本店も建て替え工事中で、今後、百貨店の競争が激しくなりそうだ。←引用終わり
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引用開始→ 時空の広場「南北のにぎわいの架け橋に」大阪に新玄関口
(asahi.com 2011年5月5日)
「大阪駅はキタの街を南と北に分断していた。今度は南北のにぎわいの架け橋になってほしい」新駅開発プロジェクトリーダーを務めたJR西日本の宮崎博司課長(44)は、そんな思いから新駅最上部に広がる「時空(とき)の広場」をつくった。
大学で環境工学を専攻し町づくりや公園デザインの研究に没頭した。入社後は駅ビルの開発に携わり、実績を買われ5代目大阪駅のプロジェクトを任された。
人々が集い、憩う理想の空間とは――。学生時代から追い求めた答えはなかなか見つからない。「全面芝生張り」「遊園地」……。社内で様々な案が出ては消えた。
2008年2月、傾倒していた国際的な工業デザイナー、水戸岡鋭治さん(63)の事務所を訪ねた。「医者のように的確な処方箋(しょほうせん)を書いてください」。東京と大阪を30回以上往復し、議論を重ねた。
水戸岡さんは時空の広場にあえて大きな建造物を造らなかった。代わりに必要に応じて最大50本のポールを立て、空間を自由に間仕切りできるよう工夫した。
「演奏会、茶会、お祭り。自由な発想で使ってほしい。多くの人が集い、いい出会いが生まれるとうれしい」。広場を生んだ2人の共通の願いだ。
グランドオープンのこの日、広場は百貨店「JR大阪三越伊勢丹」に入る客の行列スペースとして使われた。混雑は5日も続きそうで、「憩いの場」としての本格デビューはしばらくお預けになりそうだ。(小河雅臣)←引用終わり
(朝日新聞社asahi.com)
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