ASEAN各国の経済は堅調に見える 再び世界から利益を求める投資マネーも
労働力は余っていても決定的に資本を欠く途上国へ「投資マネー」が集まる事で、途上国は資本と技術を手に入れ低額な賃金で生産した製品を、先進国市場へ輸出する方法で資金を得る。
一定の時間が経過すると生産設備は老朽化する。
設備を更新するには新たな資本が必要だ。
輸出で獲得した資金は資本に充当されるほどではない消費に回されるため、新たな設備には新たな資本を必要とする。
世界には大量の資金があぶれており、大量の余剰資金を持つ側は、短期間で大幅な利益と確実な回収を得られそうな途上国を探し求めている。
途上国の成長産業への投資は先進工業国への投資に比べ、少額の資本で済む事また輸出市場が激変しない限り、低賃金で製造された製品は強い競争力を有するため着実に資本回収ができる。
まぁ簡単に言えば、この種の理屈で途上国の輸出産業へは投資が集中するワケだ。
でぇ、投資を受けた側は、輸出製品の競争力が安定的に推移していると見るや、不動産投資やサービス業への開発投資に資金を廻し、さらに莫大な利益を得ようと頑張ってしまう。
外国人ビジネスマンや外国人投資家の滞在に必要なアパートメントやフラッツといった住居の環境が劣悪な国では、それらを解決するための不動産投資は投資効率の面ではとても効果的である。
資金回収が早く利益も大きければ外国人投資家の信用も大きくなる。
従って、本業の製造業で地道に稼ぐよりも不動産投資で得る利益の方が大きいと自慢する人は数多い。
やがて、外国人ビジネスマン向けの不動産投資が一段落し始めると、今度は、途上国側で一儲けした自国のリッチマン向けに不動産開発を競い合う。
どこかで見た光景だ。
海外の余剰資金による途上国への直接投資は、様々な分野で短期的な利益を求め集中化する傾向が強い。
しかし、これらはいずれも先進工業国市場が旺盛な消費を連綿と続ける事を前提としているワケで、それらが何らかの理由で躓くと簡単に綻びが出るのだが、そのような事は無いと考え「繁栄は継続」するとの思考に強く支配されている。
だが現実の世界は、例えば「リーマンショック」があり、「東日本大震災」が発生するのである。
その都度市場は危機に陥り、何よりも回復に向けた「膨大な資金」を必要とする。
「生産」は「消費」が前提であり、「消費」は「生産」が前提である。
途上国での「生産品」は先進国での「消費財」として消費されるが、それは先進国の「生産品」を途上国も含めた市場で「消費」する事を前提としている。
それぞれのレベルの「生産」と「消費」が組み合わされ適切な分担の下で補完し合う事で、所得も配分され「消費」が発生し「生産」を刺激するワケで、基本的に循環し合う構造が成立している。
「先進国の消費市場」が安定する事で「途上国の生産」は安定する。
「途上国の生産」に多少狂いが生じても「先進国の消費市場」が受ける影響は軽微だ。
「先進国の消費市場」で目算を狂わせる手違いが生じると「途上国の生産」は大打撃を受け、十分な「資本蓄積」を保たない経済活動全体が重大な打撃を受ける。
従って、投資した資金の利益は愚か回収にも重大な影響を及ぼす事になる。
それ以前に、先進国の側が自国の経済的理由により投資資金の回収や引き上げを急ぐようになる。
長期資金は引き上げまで時間を稼ぐ事もできるが、短期資金は一気に回収引き上げに直面させられる。
資本蓄積がないと一溜まりもなく「倒産・破綻」へ追いやられる。
簡易に述べればこのような関係だろう。
ASEANの中でタイやインドネシアまたマレーシアは、1997年に否応なく経験させられた。
ASEANではないが韓国も同様の経験を強いられた。
いま、ASEANの中では「ベトナム」が外貨不足に直面させられ苦闘を余儀なくされ、懸念対象と囁かれている。
”とらえもん”と”まるでのうそまろバカセ”は、既に2002年に「ベトナム経済」の基本課題として、「日越投資保護協定」を巡る一連の過程で警告的に指摘した。
この度、「ASEANと日韓中」が財務相会議で「ASEAN域内の経済」を監視する機関の国際機関へ格上げする事を考慮した共同声明を採択した事は実に当を得た決定と歓迎する。
引用開始→ ASEANプラス3:域内経済監視を強化 新機関格上げも
【ハノイ共同】東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国(ASEANプラス3)の財務相会議が4日、ベトナムのハノイで開かれ、域内経済を監視する新機関「AMRO」の機能を強化し、条約に基づく国際機関への格上げも検討するとした共同声明を採択した。
アジア地域の経済情勢については「世界金融危機を切り抜けた後、堅調な内需と輸出の回復により力強い成長を遂げてきている」と総括。ただ、東日本大震災と中東・北アフリカ情勢に関しては「(経済の)不確実性が浮上した」とし、アジア経済への悪影響に懸念を示した。
声明では来年から各国の中央銀行総裁を加えて「財務相・中央銀行総裁会議」とする方針を明記。会議の枠組みを拡大し、各国による域内金融協力を一段と強化することで合意した。会議の枠組み拡充で、為替の問題も含めた幅広い政策協調の実行が期待される。
AMROは今年4月、シンガポールに設立。参加国が通貨急落といった危機に直面した際に外貨を融通し合う通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」を発動する際の判断に関わる。チェンマイ・イニシアチブについては、危機が起きる前に予防的に貸出枠を設定できる制度の導入に向けた検討に入る。
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◇ASEANプラス3声明骨子
▽経済・金融情勢
・域内経済は世界金融危機を切り抜けた後、堅調な内需と輸出の回復により力強く成長。
・1次産品や食料価格の高騰に起因するインフレがリスク要因。
・中東・北アフリカの情勢や東日本大震災がアジア経済の新たな不確実性として浮上。
▽通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」
・域内経済の監視機関「AMRO」設立を歓迎、法的地位を国際機関に格上げする研究開始。
・協定の規模や国際通貨基金(IMF)との連携、危機予防機能について研究開始。
▽その他
・中央銀行総裁の知見と経験が不可欠と認識、来年以降「財務相・中央銀行総裁会議」とする。【ハノイ共同】
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