ベトナムと日本 原発輸出=原発管理技術輸出についての信頼維持を
ベトナムが1986年に「ドイモイ政策」を採用し、外国からの直接投資(FDI)を受け容れ「工業化」への舵を切る事を表明し25年が経過した。
当初は、社会主義国の原則からFDIは原則的に国営企業(国有化事業)との「合弁事業」で進めようとした。
しかしながら、設備や技術力の面で大きな遅れがあり、投資に見合う生産と採算性を確保する事は非常に困難であった。
最初は、大量の労働力(人手)を投入する事で技術や速度をカバーしようと試みた。
それは繊維製品の縫製や加工の分野で一定程度の功を奏した。
一次産品と単純労働による二次加工品により国際市場を切り拓くには無理な話だ。
(大量の雇用[単純賃加工労働]を創出し、大規模失業の解消には有用性を得た)
実際に、短期的処方としてはそれも有効だが、工業国への途筋が確保されるワケではない。
そこで、次に「組み立て加工業」へ舵を切る。
たちまち、全ての部品を輸入し、「組み立て加工(単純労働力の提供)」するだけの「汗の労働」では扱うアイテムが異なるだけで構造的には変わらない。
例えば、オートバイの組み立てをするにも、組み立てられるオートバイの性能や品質は設計技術に基づく部品の性能にあると言っても過言ではない。
何よりも「設計思想」と「設計技術」さらに「製造能力」が必要な事を知る事になった。
1990年代~2000年代の半ばまで、「オートバイ部品の輸入」を嫌がり、現地部品調達率でモメにモメ、日本とベトナムの関係は実に険悪な情勢に陥った。
それを克服する過程で、一つの完成品は、①完成品(組立て)の前に、②セットアップがあり、③一次部品メーカーがあり、④二次部品メーカーがあり、⑤三次部品メーカーがあり、というようにピラミッド状の組織が裾野産業として幅広く形成されている事をベトナムは理解した。
それらは、オートバイの設計段階から部品を共に開発(擦り合わせ設計と開発)する事で依存し合う関係にあり、同じような部品なら造る能力がある(と誤解)ように考えるのは仕方がないが、少しばかり無理がある事を理解させられたのだ。
それでは、部品を製造する中小企業(裾野産業)を誘致しようという事になり、いきなりベトナムへの中小企業(裾野産業誘致)移転が2000年代の半ばからいきなり積極化したのである。
しかしながら、供給電力が乏しくそう簡単にはいかない事情が生じる(直面する)事になる。
「金属加工」で、鍛造、曲げ、削出、金型加工、現代の工業製品製造のエネルギー源は「電気」に依存している。
有り体に言えば鍛造するにも「金属」を熱するのは「電気」すなわち「電力」なのである。
高周波マイクロウェーブを用いるワケで、この出力が安定しなければ工業製品としての「金属加工」は無理なのだ。
日本から裾野産業を誘致する事はできても、電力が大量に安定的に供給できなければ「画に描いた餅」に終わるワケで、ここから「安定した発電事業」として「原子力発電(=軽水炉型)」導入の検討が始まったという構図だ。
「原発」の設置は「原発管理技術(制御技術とメンテナンス技術)」の提供を伴うため、先端技術の移転にも繋がるため、両国の信頼関係が強まる事を意味する象徴性の高い案件となった。
工業国への脱却を図るベトナムにとり「電力開発」は死活問題であり、「原子力発電」を維持管理できる技術を獲得する事はASEAN内でのポジションを強固にする上からも不可避なテーマといえる。
何よりも対中国政策(戦略)を考えても、「原子力発電」を維持管理できる事を示すのは、別の観点による国家の安全政策でもある。
そのためにも、日本からの導入でなければならないのである。
2010年の年末まで、日本世論は「ベトナムでの日の丸原発受注推進」一色だったのである。(全ての報道[印刷媒体]を検証される事をお薦めする)
それが2011年3月以降、一転し消極的ながら「原発輸出反対」へと変転したのだ。
日本がベトナムに対し「電力」供給の拡大を助言し「原発を買え」と迫り、今度は一転しナンの自己総括も反省もなく厚顔に「原発輸出は控えるべき」と、多くの報道機関が主導し、その方向へ世論全体が流されてしまい「科学的な検証」も何も為さず、ただひたすら「原発=諸悪」のイメージ形成を行い、蛸壺に身を潜め、自らの手は綺麗だと口を拭い素知らぬ顔を決め込むのはいかがなモノか。
引用開始→ ベトナム首相「日本の原発技術を信頼」
(日本経済新聞2012/4/21 20:12)来日しているベトナムのズン首相は21日、都内で記者会見し、日本が受注している同国の原発建設について「日本の高いレベルの技術と安全性を信頼している」と述べた。福島第1原発事故の経験に触れて「発電技術を高めることになる」とも指摘。日本側からベトナム人技術者への安全管理教育などの実施に期待を表明した。
南シナ海を巡る中国との領有権争いをめぐっては「平和安定と航行の自由が地域の共通利益だ」と主張。法的拘束力を伴う「行動規範」を東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国とで作る必要があると強調した。←引用終わり
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