世界の経済が停滞すれば 中国だけが景気繁栄を謳歌できるワケはない!
世界の国々は、お互いに連携し合う事で存在している。
どんなに大国になっても、どのように小国であっても、仮にどこかの国に蹂躙され主権を奪われたとしても、その地域が地球上から抹殺されない限り、世界と連携し合い存在するし生きていく。
中国が、如何に大国であろうと、影響力のない小国であろうと、中国は世界の市場と連携しなければ生きていけない。
どのように連携するのか、貿易により連携するのである。
その昔は「交易」と呼ばれだ。
「交易」の原点は「市場(いちば)」であり物々交換だ。
それらを貨幣で交換する事により「交易」は活性化し広範囲に拡大した。
やがて、隊商を組み、沙漠をモノともせず危険を冒してまでも「交易」を求め人々は往来し交流するようになった。
やがて、大航海時代を迎え、船による大量の「交易」が始まった。
一方に「大航海」を支える「造船」技術があり、「交易品」を守り抜く「武器」技術があり、守備する「兵隊」が組織された。
「文明」の違いによる「異なる器物」が「交易」の対象として「珍重」され、大きな価値を生んだ。
やがて、組織的大量に交易品を求める乱暴狼藉が頭角を顕し、有効な武器を持つ側が持たない側を侵略し組み敷く事になった。
有効な武器を持たなかった側は、巧妙に組み敷かれ支配され略奪された。
いくつもの抵抗があり、蜂起があり、戦いが組織され、乱暴狼藉を働く専横者を排除したのは20世紀の最後の頃であった。
やがて、乱暴狼藉を働き専横的に他者を支配する行為は批判され非難され謝罪を余儀なくされた。
その反省の上に、世界は、透明性を保ち公正で健全な「貿易」を限りなく自由に行う事を、相互に保証し合い「友好と平和」を保ち、さらに「世界の冨を増大させる」試みに挑んでいる。
しかしながら、高邁な理想も、その市場でゲームに参加する側の理解力はバラバラ、マチマチで、自分勝手に、自らの都合に合わせ解釈し、相手が弱体だと考えるや否や一気に仕掛けたたみかける勢力が現れる。
しかも、その際、自らの歴史的に味わった屈辱感を全面に押し立て、攻守一転し、相手の市場を奪い尽くす事で「利を得よう」とする。
これを、奪われる側は「理不尽」と舌打ちするが、嵩に着た側は頓着なく攻略し続けた。
その結果、他人のカネをジャブジャブ使って、過去の屈辱を否定し栄光を取り戻したかのように見える、「ニワカ成金」の横柄さを世界に撒き散らしている。
しかし、その束の間の繁栄は、世界から投資を受けた他人のカネであり、投資した側がカネを回収しようとモノを造らせ、自分達の市場を少し譲って売らせたのである。
現在の「貿易」は、労働の交換ともいえる。
安い労働力で生産した粗悪品の「モノ」を、使い捨てと捉え「安価な労働力」を買い消費しているのだ。
しかし、そのようなバカげた状況が、いつまでも続くわけがない。
主たる、巨大市場が消費力を失い停滞を見せると、市場提供者の「労働」を奪い続けた側が、いつまでも繁栄を謳歌し続ける事はできない。
以下に引用紹介する記事は、中国国内の様々な生産点を巡回した上で纏められた記述である。
ここに記述された内容を見るまでもなく、世界の市場は相互に連携し合っている事についての理解力があれば、他国の市場を当てにした中国の生産力が減退を余儀なくされ、抑制に動くのは当然の事である。
それは、日本も同様なのである。中国経済の減退は、相互に連携する日本の減退にも繋がる事を理解する必要がある。
引用開始→ 莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見
(2012年9月6日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト])
リーマンショックを上回る景気後退!?
脱皮迫られる中国企業と中国経済中国経済が厳しい局面を迎えている。中国各地を回ると、ひょっとしたらリーマンショックの09年よりも厳しいといった声が絶えない。景気の後退がいろいろなところに出ている。たとえば、これまで売り上げのことをあまり心配していなかった日系建機メーカーも、製品の販売に赤い信号がともったのを体感している。中国企業を見ると、こうした傾向がより顕著に出ている。
需要減少、コスト上昇で、
減産や生産停止の企業が増加
7月27日に閉幕した浙江省人民代表大会常務委員会の第34次会議では、2012年上半期の浙江省全域における経済運行状況に関する同人大財政経済委員会の調査報告が、大きな注目を受けた。この調査報告は「市場のニーズは依然として不振のままだ。一部の企業が運営困難な状態にある。生産・経営の総合コストが高騰する。地方財政の収支バランスの維持に圧力が大きい」といった4つの問題を指摘している。ご存じのように、中国経済を飛行機にたとえるなら、珠江デルタと長江デルタは、その飛行機の飛行を支える2つのエンジンだ。珠江デルタがすでに傾いてしまったことは周知の通りだが、長江デルタも危なくなると、大変な事態を招いてしまう。
長江デルタは上海を先頭に、浙江省と江蘇省が両翼を成している。とくに民営企業が一番発達している浙江省は経済危機に強いという定評があった。しかし近年、多くの民営企業が利益の出にくい製造業から、暴利が望めそうな不動産投資に走ったため、浙江省経済の不景気に対する耐久能力が大幅に落ちた。
先述したこの調査報告によれば、企業の経営・生産の総合コストが上がるに従い、受注が一層減少し、減産や生産停止に追い込まれた企業が多い。温州市だけでもある規模以上の企業では、60.4%もの企業が減産や生産停止に追い込まれた、と具体的に指摘している。
1990年代、温州モデルと持ち上げられたほど注目された温州の停滞ぶりに、高度成長の道を走ってきた中国経済が、一つの転換点を迎えつつあることを見出す人が大勢いるだろう。
中央政府の公式統計と
大きく食い違う粗鋼生産量
しかし、中国の多くの地方政府はこうした危機に対する認識がまだ甘くて、その対策もとても的を射たものとは思えない。9月1日、もと冶金省次官だった中国鋼鉄協会の呉溪淳名誉会長が冶金工業規劃研究院の主催による「2012年中国鉄鋼技術経済ハイレベルフォーラム」の席上で、「昨年、私が国の粗鋼生産量が実質的にすでに7億トンという大台を超え、約7.3億トンだった」と公表した。
一方、国家統計局が公表した2011年中国の粗鋼生産量は、約6.8億トンだった。呉溪淳名誉会長が公表した数字は、中央政府の公表したそれより約5000万トンも多いという信じられない結果になった。
その原因は、製鉄所が多い河北省にある。河北省は実際生産した粗鋼生産量より、約5000万トンも下回った数字しか統計に出さなかったからだ。山東省、山西省にも同様の傾向が見られる。中央政府からエネルギーの消費量と二酸化炭素排出量の減少を厳しく求められているから、粗鋼生産量の統計数字を低くすると、エネルギーの消費量と二酸化炭素排出量を効果的に抑えられたという演出効果がある。実績を作りたがる地方政府も、企業のこうした不正を見て見ぬふりしたのだ。
しかし、経済の後退で隠してきたこれらの粗鋼は消化しきれなくなり、ついに衆目にさらけ出されてしまい、もともと頭を悩ます不景気問題がいっそう深刻化してしまう。
金融緩和やリーマンショック後のような大規模な財政出動を求める声も相当あるが、反対の声もかなり聞こえる。リーマンショック後に実施された4兆元の財政出動が不動産価格の暴騰を招き、今日の不動産バブルを作ってしまったとの批判を前に、中央政府も躊躇せざるを得ない。
安かろう悪かろう路線からの
脱皮が求められる
ただ、実際にビジネス現場を見ると、不景気の中で健闘している企業もかなりある。たとえば、工作機械メーカーは製造業の景気に左右されやすいと言われる。先月、筆者はちょうど江蘇省、山東省、浙江省の複数の工作機械メーカーを視察した。確かに苦しい状態にある企業があるが、一方で、ある工作機械メーカーは「つい最近も、安徽省の企業から一度に400台もの工作機械の製造注文を受けた。新しい注文が入っても来年にならないと、とても対応できない」と、受注が多すぎることに嬉しい悲鳴を上げている。その明暗の分かれ目はやはり市場の先を見通した技術力だと思う。中国企業は今度の不景気で淘汰と生き残りの厳しい選別を受けるだろう。中国四川省出身の有名な民営企業・四川新希望集団の董事長・劉永好氏が最近、「利益が出ない企業があっても、利益が出ない業界はない」と指摘している。
これまで安かろう悪かろう路線で急成長してきた中国企業は、経営と技術のレベルアップを迫られている。新しい市場を掘り起こして企業を存続させるためには、今まで以上の努力が求められている。勝者になるためには、中国企業も中国経済も大きく脱皮しなければならない。←引用終わり
タレント 莫邦富(モー・バンフ)
[作家・ジャーナリスト]1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。
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