2000円札(弐千円札)は無用の長物か? ATMや自販機の経済合理性だけで片隅へ追いやるな!
以前 SNS上で話題になりました「2000円札」ですが、
「私、知ィラナァ~ィ!」
「そんなの聞いた事、ナァ~ィ!」
「見た事ナイよ!」
「オモチャのお札?」
などなど、賑やかでした。
2000円札の新券が手元に届きましたので、改めて表裏を眺めているところです。
この紙幣は、故・小渕恵三総理が「沖縄の振興」を掲げ、「沖縄でのG8サミット」の際(2000年)に発行されました。
そのため表面は、那覇市の世界文化遺産「首里城」を護る「守礼之門」が、裏面にはシェイクスピアより古い日本を代表する女性随想文学者の「紫式部」と作品の一部が刷り込まれています。
*財務省の説明資料を転載します:
2000円札表面(財務省公開資料より)
より、詳細な説明は下記のURLをクリックしご確認下さい。
https://www.mof.go.jp/currency/bill/issued/so004.htm
SNSでも、海外在住の多くの皆さんはご存じないと、あるいは国内で暮らされる皆さんも、上記のように「知らない」と話題になりましたが、2000円札が国内(倭の地)で流通しないのは、ATMや自販機の大幅改修が必要な事、その費用が莫大であるためなどによります。
そのため、いわゆる本土(倭の地)では、現在時点では殆ど流通していません。
沖縄はATMも自販機も台数に限りがある事、そして何よりも発行のコンセプトが生きるために生活に根付き流通しています。
紙幣は一国の「文化」です。一国の「経済」は「文化」により形成されている事を真剣に考え、世の中は「経済合理性」だけで維持されていない事について思い致す必要があると考えています。
そのため、SNS上で知らない、そんな札があるのか、という反応になったものと受け止めています。
一般的な日常生活をされる上で、知っていても知らなくても、別段の支障は生じませんし。
現在の状況は、下記引用の「讀賣新聞」の記事をご参考に頂ければと存じます。
引用開始→ 「使いにくい」2千円札…流通、1億枚割り込む
(讀賣新聞2014年08月03日 12時53分)2000年7月に誕生し、15年目を迎えた2千円札の流通枚数が、1億枚を割り込んでいたことが分かった。
03年度までに計8億8000万枚発行されたものの、04年度以降は印刷されておらず、今年6月末現在の流通量は9900万枚。店舗などでは「使いにくいお札」と敬遠され、経済の専門家は、普及に対する政府の甘い見通しを批判している。
内規で使わず 「間違いを防ぐため、店頭では2千円札は使わないようにという社内規定があります」
東海地方を中心にスーパーを展開する「ユニー」(本社・愛知県稲沢市)の広報担当者は、そう打ち明ける。「例えばお釣りで4000円渡す場合、2千円札2枚より、千円札を1、2、3、4枚と数える方が間違いがなく、分かりやすい」と説明。スーパー「ヤマナカ」(本部・名古屋市)でも「2千円札を見慣れないお客様が戸惑うこともあるので使っていない」という。
「2千円札をよく見かける」と言われていたコンビニエンスストアの現金自動預け払い機(ATM)からも姿を消しつつある。ローソンでは約5年前まで、ATM内に用意する紙幣の枚数を抑えられるとして、1000円単位の出金の際は、2千円札が優先して出るように設定していた。
現在、この設定にしているのは、那覇市の守礼門が描かれていることから2千円札の普及活動が積極的に行われている沖縄県内の店舗のみ。ローソン広報は「5年前に導入した新型のATMは、以前よりも機械内に紙幣が多く入る構造のため、2千円札を入れる必要はなくなった」という。←引用終わり
2014年08月03日 12時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
Copyright (C) The Yomiuri Shimbun.
2010年に日本経済新聞が報じた「2000円札」についての記事です。
引用開始→ 2000円札 なぜ目にしない? 理論通りならもっと普及
(日本経済新聞 2010/6/14 7:00)
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「授業で先生がちょうど10年前の2000年に二千円札ができたって教えてくれたけど、見たことないわ」。事務所で小学生の伊野辺詩音が尋ねた。「僕もしばらく使っていないな」と探偵、松田章司。「よし、調べてみよう」2人はお札を発行する日本銀行に聞きに行った。世の中に出回る二千円札は3月末時点で1億1000万枚。一万円の71億枚、千円の36億枚よりはるかに少なく、お札全体の中で二千円札の比率は0.9%だ。
二千円札は00年7月に登場した。あまり使われないため、日銀は04年度から印刷していない。「でも1億1000万枚もあるならおおむね1人1枚持っている計算だからもっと目にしてもいい気がするけど」
章司は大手銀行に尋ねてみた。両替は応じているが、お金を出し入れするATMで二千円札を引き出せるのは三井住友銀行だけで、しかも全国で十数カ所のみ。スーパーも「レジにおつりとして用意していません」(イトーヨーカ堂)。
コンビニエンスストアのATMでも二千円札はなかった。ローソンの杉原弥生さん(33)は「昔は二千円を扱っていましたが、今は沖縄にある23台を除いて一万円と千円を入れているだけです」と話した。
「せっかく新札を発行したのにもったいないわ」。口をとがらせる詩音に日銀の徳高康弘さん(36)は「2で始まるお札になじみが薄いことが理由かもしれません」と話してくれた。日本にも昔は二百円札などがあったが、二千円札が出るまで50年以上、日本では2のつくお札が造られておらず、それが普通になった。
でも二千円札があれば、財布のお札が少なくなる。例えばレジで一万円札を出して9000円のおつりがある場合。全部千円札なら9枚、五千円と千円なら5枚になるが、五千円と二千円なら3枚で済む。
海外では2のつくお札は珍しくない。英国はお札全体の約6割が二十ポンド紙幣だし、米国も二十ドル札が約4分の1ある。どちらもさらに小さいお金の単位に直すとどうなるか。1ポンドは100ペンス、1ドルは100セント。「二十ポンドなら2000ペンス、二十ドルは2000セントだな。この数字は確かに重宝するな」と章司はうなずいた。
「この効果は理論的にも確かめられています」と一橋大教授の北村行伸さん(53)が声をかけてきた。「じゃあ、数字を使ってハッキリさせてみましょう」
てんびんで1グラムから40グラムまで1グラムずつ量ろうとすれば、何個の重りで済むのかという有名な数学の問題がある。答えは1グラム、3グラム、9グラム、27グラムの4つ。例えば22グラムの塩を量る時はAの皿に27グラム、3グラム、1グラムの合計31グラム、反対のBの皿には9グラムを置く。Bの皿に塩を徐々に載せて釣り合うのは31から9を引いて22グラムだ。
1、3、9、27というのは1から次々3をかけた数。より重い物でも3をかけた数の重さを用意すれば自在に量れると証明されているそうだ。「この考え方はお金にも応用できます」
例えば一円玉のほか三円玉、九円玉、二十七円玉……と用意すればお金のやりとりが一番減らせる。「そんなお金は実際にないし、あっても計算が難しいわ」と詩音がこぼすと「お金は十や百ずつが計算しやすいから、5や10で割り切れる近い数字を選んでもいいですよ」。3なら五円、9は十円、81なら百円、729は五百円と千円……。「あら実際の日本のお金じゃない」と詩音が目を見張った。「2187なら二千円か」。章司は叫んだ。
「日本は千円から五千円の間がだいぶ空いていました」と北村さんが補った。二千円札の登場で理論に近くなり、十、二十、五十ドル札があるドルと同じ数字の並びになったわけだ。
だが現実には二千円札は普及していない。「二千円札が出たころ、大きさや色がほかのお札と紛らわしいという不満が多かったな」と章司が当時を回想していると法政大准教授の平田英明さん(36)が助言してくれた。「財布の中で分かりやすいよう、人はお金の種類を少なくしがちです」
英国は上位3種類のお札で全体の93%、米国は81%を占める。日本も一万円と千円で8割以上。五百円札があった1982年3月末に、お札の割合は千円(32%)、一万円(28%)、五百円(10%)、五千円(3%)の順だった。五百円札は造られなくなったが、それでも二千円札が入り込む余地は少なかったわけだ。
「謎は解けたね」と満足顔の章司の横で詩音がつぶやいた。「硬貨でも同じことがいえそう。さっき3を次々かけていった時に243という数字が出てきたから、二百円か二百五十円玉があっていいはずよ」
このひらめきに一橋大の北村さんは「理論的には間違っていませんよ」とほめてくれた。ただ種類が増えると管理が大変だから実際は造られないのだという。
事務所に戻った詩音はうれしそうだった。「経済の勉強のはずが算数もできて得した気分よ」(初田聡)
<ケイザイの理屈>「昼食も硬貨1枚」500円玉の地位向上
お札から硬貨に替わった500円の“価値”が上がっている。電子マネーの普及で一円~百円玉の枚数が減る中、五百円玉の枚数だけが増えているのだ。背景には「景気低迷で五百円玉1枚で事足りるモノやサービスが広がっている」(電通総研)ことがある。ファミリーマートが売る弁当の95%は500円未満。百貨店の松坂屋銀座店(東京・中央)は500円ランチを始め、500円の料理教室も登場した。日本経済はモノやサービスの価格が下がるデフレの状態が長く続く。その影響で五百円硬貨の人気や使い勝手が高まっている。[日経プラスワン2010年6月12日付]←引用終わり
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