2016年の「世界の政治と経済」予想を年頭に記録しておく!
この1年、世界は大きく動くだろう。
それにどう対処するか、適切に対応できれば「幸運」の同心円内に踏みとどまれるだろう。
それだけなのだが。
これは実に大きな「賭」でもある。
情報と金融は密接不可分に一体化している。
相互に作用し合い干渉し合う関係にある。
僅かな「思惑」で世界の市場を震撼させる事態をも招く。
それゆえに、「情報と金融」を、どう捉え読み取り対処し適正に措置を講ずるか。
間違えれば足下が吹き飛ぶ。
日本経済新聞がFTを用い記事としてまとめているので、後のため参考に記録しておきたい。
引用開始→ FT執筆陣が大胆に占う2016年の世界
(日本経済新聞 2016/1/1 6:30 Financial Times)新年が手招きするなか、本紙(フィナンシャル・タイムズ)は今再び、向こう12カ月間の出来事を予測する恒例の儀式にとっぷりつかっている。本紙の専門家と解説者が普段の慎重さを封印し、米国の大統領選挙からサッカーの欧州選手権(ユーロ2016)に至るまで何が起こるかを予想する。
その前に、1年前の予測の結果をざっと見てみよう。エド・クルックスは原油価格の続落を正確に予測した。原油価格がすでに半値になった年の終わりだけに、これは勇気ある予想だった。マーティン・ウルフは欧州中央銀行(ECB)が全面的な量的緩和(QE)を導入すると予測し、その通りになった。
クライブ・クックソンは、2015年末までに西アフリカのエボラ出血熱が根絶されるとの予想を的中させた。ギデオン・ラックマンは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナや欧州で別の地域を併合することはないと述べていた。2014年末の時点でそう公言していた向きは多くなかった。
外した予測も1つあった。1年前には、英国の総選挙はハングパーラメント(宙づり議会)に終わると予想した向きが多く、本紙のジョナサン・フォードもその一人だった(おまけに挙国一致内閣がつくられるとさえ書いていた)。
これ以外では、本紙は予測の内容ではなく、どんなテーマについて予測をするのかという問題設定でつまずいた。具体的には、過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の支援によるテロがフランスで発生することを予測できなかったし、ロシアがシリアで軍事行動を取ることも、移民危機が欧州連合(EU)にとって深刻な脅威になることも予測していなかった。2016年にも、まだ本紙の想像を超える出来事が起こるだろう。
(James Blitz)■ヒラリー・クリントン氏は米国大統領選挙に勝利するか。
答えはイエスだ。大統領選は流れがころころ変わる選挙、そして記憶にある限り最も見苦しい戦いになるだろう。クリントン氏は共和党の候補者テッド・クルーズ氏から、性格の面で欠点があるとか米国の敵と対峙したときに弱腰になるといった批判を受けるだろう。多くの有権者が、クリントンという名前を今日の米国の悪いところ――そして堕落しているところ――すべての象徴だと見なすだろう。だが、選挙というものの勝敗は、まだ中道(あるいは中道の残骸)で決している。クルーズ氏は、ホワイトハウスの主になるには平均的な有権者よりあまりに右寄りすぎるということになるだろう。世論調査での際どい接戦にもかかわらず、クリントン氏は選挙人団の投票では地滑り的な勝利を収めるだろうし、民主党は議会上院の主導権を奪い返すだろう。しかし、大統領としての第1期は、ひどく二極化したワシントンで始まることになる。「ハネムーン」(新大統領の就任から100日間を指す。この間、議会やメディアが厳しい批判を控える傾向にある)はないだろう。
(Edward Luce)■2016年に予想される国民投票で英国はEU離脱を選択するのか。
答えはノーだ。国民投票ではEU残留が選択されるだろう。といっても熱意や高揚感を伴った判断ではなく、英国の有権者がもともと持っている良識が最終的に勝るためだ。デービッド・キャメロン首相が再交渉で好条件を引き出せるかとか、ブリュッセルへの拠出金を投資や貿易の規模拡大で取り戻せるかといった細かい話はこの際忘れ、離脱論と残留論の主唱者が誰であるかを考える必要がある。結局のところ有権者は、ジョン・メージャー元首相が冷静に説いた論理と、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ氏のポピュリズムのどちらかを選ぶことになるのだ。
筆者はメージャー氏の方に賭ける。もしこの予想が外れたら、英国は本当に不穏な時代に直面することになる。
(Philip Stephens)■シリアのバッシャール・アサド大統領は12カ月後も権力を保持しているか。
保持している。アサド氏は2016年も、名目上はシリアの大統領であり続けるだろう。実際にはもう国家の支配者ではなく、最大の地方軍閥の地位に滑り落ちているとしても、だ。軍事面では、敵である反体制派を標的に据えたロシアの軍事介入という支援材料を得ている。政治的には、数週間前に合意された米国とロシアの計画で18カ月間の移行期間が想定されており、その計画自体もリスクをはらんでいる。和平プロセスに弾みがついた場合でも、アサド氏はこれを遅らせ、ダマスカスの権力の座にとどまるべく全力を尽くすだろう。
(Roula Khalaf)■イングランド銀行はついに利上げに踏み切るか。
踏み切らない。イングランド銀行は2016年の大半を通じて利上げをちらつかせ、市場をじらすだろうが、最終的には実行しないだろう。決断の先送りにはそれなりの理由がある。まず、インフレ率は0%からごくゆっくりとしか上昇しないだろうし、賃金の伸びも弱い。原油価格は下がっている。財政赤字の削減も好景気の到来を妨げるだろう。また、イングランド銀行は政策金利について考える前に、信用規制に関する新たな権限を試したがっている。さらに、インフレ率が目標値をしばらくの間上回ることがあっても、その影響は限定的だ。2016年の後半には行動する決断を下すかもしれないが、仮に決断したとしても、大した変化は生じないだろう。金利に関する限り、英国は2016年以降もしばらくの間、マーク・カーニー総裁の言う「低位が長引く」世界にとどまることになる。
(Chris Giles)■主要20カ国・地域(G20)から国際通貨基金(IMF)に支援を要請する国が少なくとも1つは出るか。
出るだろう。同じG20でも、先進国のメンバーは救済を必要としない。公的債務の規模を考えれば、唯一候補になり得るのはイタリアだが、この国は金融の量的緩和をはじめとするECBの施策に守られている。G20には新興国も10カ国含まれている。その中には、コモディティー価格の急落で打撃を受けているところがある(アルゼンチン、ロシア、サウジアラビアが典型例だ)。巨額の経常赤字を出しているところもある(ブラジルや南アフリカとともに、再び思い浮かぶのがサウジアラビアだ)。インドと南アフリカはともに、財政赤字が結構多い。また、ブラジルなどその他の国は、財政赤字こそ小さめだが、公的債務の負担は大きい。
このような不安定要因がすべて該当するのはアルゼンチン、南アフリカ、ブラジルの3カ国だ。この3カ国はストレスにさらされており、最近、財務相が交代している。また、アルゼンチンでは新政権が新しいアプローチを公約している。IMFの準備はできている。これらの国々の少なくとも1つがIMFに救済を要請するだろうか? その可能性は高いように思われる。
(Martin Wolf)■アンゲラ・メルケル氏は2016年末にもドイツ首相の座にとどまっているか。
答えはノーだ。先日の与党・キリスト教民主同盟(CDU)の党大会ではメルケル氏をたたえるスタンディングオベーションがあったが、2016年は、同氏が首相として国を率いた長い時代が終わる年になりそうだ。2015年だけで約100万人もの難民がやって来たことによるプレッシャーにもかかわらず、あのようなスタンディングオベーションが見られたことは、メルケル氏の(首相の)座が安泰であることの決定的な証拠のように思われた。しかし同氏は、受け入れる難民の数を来年は減らすと約束している。そして、この約束は果たすことができそうにない。密航業者の手を借りて必死に逃げのびてきた移民の流入が続くからだ。
首相の勇気と道義的なリーダーシップに対する称賛は、不確実性と不平不満に取って代わられるだろう。最初に亀裂が入るのは、地方政府の反発からかもしれない。地方政府は押し寄せてくる難民の数をさばききれないと断言している。もしそうなれば、ついにCDU内からメルケル氏に挑む動きが出て、その座が揺らぐことになるだろう。
(Gideon Rachman)■サッカーの欧州選手権(ユーロ2016)で勝つのは誰か。
ベルギーが勝つ。最近の国際サッカー連盟(FIFA)ランキングによると、ベルギーは世界最高のチームだ。この難解な係数はベルギーの質を誇張しているが、法外な差で誇張しているわけではない。スカウトと指導の高度なシステム――そして移民に対するリベラルな帰化政策――を通じて、もろい政府の下にあるこの小国はエリート選手を続々と生み出してきた。ベルギーはエデン・アザール、ケビン・デブライネ、ロメル・ルカクの攻撃トリオを投入できる。この3人は合計した市場価値が1億5000万ポンドに達するイングランド・プレミアリーグのスター選手だ。ドイツのチームはより経験豊富で、スペインのチームはより結束力があるが、技術的な質そのものにおいてベルギーに欠けるものはほとんどない。フランスが開催国であることから、ホームアドバンテージに似たものもある。
(Janan Ganesh)■ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は、オリンピック(五輪)がリオデジャネイロで始まる前に弾劾されるか。
答えはノーだが、際どい情勢になるだろう。今のところ、ルセフ氏は恐らく議会で弾劾手続きを阻止できるだけの支持を得ている。しかし、時間がたてばたつほど、ブラジルの景気後退が悪化し、大統領の政治的な支持が低下していく。たとえ下院が投票で手続き開始を決めたとしても、弾劾手続きが始まるのは恐らく2月10日になってからだろう。その後、複雑な手順に丸180日かかると仮定すると、ルセフ氏は8月半ばに弾劾される可能性がある。これは五輪が8月5日に正式に始まった後になる――やれやれ――が、8月16日の高跳びの決勝にはまだ間に合うタイミングだ。
(John Paul Rathbone)■中国は新年に人民元を大幅に切り下げるか。
イエス。中国には、2016年に対ドルで人民元を安定させておきたいと考える妥当な理由がある。商品貿易の多額の黒字、莫大な外貨準備、そして「レッドバック(人民元の呼称)」が立派な準備通貨であることを世界に示そうとする願望だ。だが、人民元はやはり、現在の1ドル=6.48元前後から約7元まで下げる可能性が高い。米ドルが米連邦準備理事会(FRB)の継続的な金融引き締めに支えられる一方で、低迷する中国経済は恐らく、新年に少なくとも2度の利下げが必要になるからだ。そのために中国からの資本流出は高水準が続き、通貨に下落圧力がかかる。人民元の軌道は滑らかなものにはならないだろう。2016年は多分に、中国の通貨にとって最も振れの大きい年になる。
(James Kynge)■ジェレミー・コービン氏は今から1年後も英国労働党を率いているか。
イエス。それも複数の理由がある。1つ目は、労働党の議員はそうではないとしても、党員の大半が続投を望んでいることだ。世論調査における労働党の成績不振にもかかわらず、一般党員は党が取っている方向性に満足しているように見える。そのうえ労働党議員の生来の忠誠心がある。保守党と異なり、労働党は「暗殺」を得意としたことがない。また、いずれにせよ、今その可能性が高く思えるように、コービン氏が労働党の不明瞭な党首選規則を変更し、何があろうと現職が候補者名簿に載るようにすれば、どんな挑戦もひいき目に見て非現実的だ。
平和主義を掲げる最後の労働党党首だったジョージ・ランズベリーを1935年に退任に追い込むには、アーネスト・ベビンの全力を挙げた弁舌が必要だった。当時、労組のリーダーだったベビンは、ファシズムに立ち向かうよう党を説得した。今日の労働党にはまだ、ベビンがいない。2016年に姿を現すことはなさそうだ。
(Jonathan Ford)■アベノミクスは2016年に失敗するか。
答えはノーだ。アベノミクスの実績はまちまちだが、全体としては、日本経済に害よりも大きな利益をもたらした。この状況は2016年も続くだろう。確かに、中心となる目標――インフレ率を2%に引き上げること――は達成できなかった。石油価格が急落したために、通常の尺度で測ったインフレ率はまだゼロ近辺で推移している。安倍晋三首相率いる政府は、消費税を早計に引き上げることで問題を悪化させた。消費者が支出してくれることを望んでいたまさにそのときに、人々のポケットからお金を奪ってしまったのだ。だが、アベノミクスの全般的なリフレ目標は、うまくいっている。エネルギー価格を除外すると、インフレ率は約1%だ。名目国内総生産(GDP)に対する比率では、公的債務の増加は止まった。日本企業は記録的な利益を計上している。安倍氏の問題は、2017年に消費税を再び引き上げると誓ったことだ。危機的な状況が訪れかねないのは、そのときだ。
(David Pilling)■ロシアの陸上選手は2016年五輪に出場するか。
イエス。ソ連時代の大量ドーピングを復活させたことについてロシアを罰しようとする政治的な意思は存在しない。ロシアは2015年11月、薬物を使っていないことを証明できるまで無期限で陸上競技への出場停止処分を受けた史上初の国になった。だが、ロシアと西側諸国は、陸上史上最悪の部類に入るような薬物使用をリストアップした第三者報告の困惑を最小限に抑えたいと思っている。リオデジャネイロ大会に出場するためには、ロシアはドーピング計画に加担した当局者を全員解任し、未解決の規律違反案件をすべて解決し、国のドーピング文化について調査し、行動を改めたことを実証してみせなければならない。ロシア側は、これには3カ月かかると話している。
(Malcolm Moore)■2016年には、ディーゼルエンジンを搭載した自動車の販売が欧州で減少するか。
イエス。欧州の自動車購入者はすでにディーゼルエンジンへの熱意を失い始めており、フォルクスワーゲン(VW)が全世界1100万台のディーゼル車について排ガス試験で不正を働くためにソフトウエアを搭載したことが秋に発覚した一件は、販売減少に拍車をかけるだろう。欧州の新車に占めるディーゼル車のシェアは2010年の55%でピークを付けており、補助金が減額され、環境に対する影響への懐疑論が高まったフランスでは急激に低下している。VWはディーゼルエンジンでは特に規模の大きいメーカーであり、スキャンダル発覚後の11月には主要市場における同社の自動車販売台数が20%以上減少した。2016年には、ディーゼルのシェアが急激に低下し、自動車市場全体の伸びを相殺してしまうだろう。
(Brooke Masters)■北海ブレント原油は年末に50ドルを超えているか。
イエス。2015年の石油市場は、前年の暴落からの急反発を信じていた人にとって、ひどく厳しいものになった。米国シェール産業の粘り強さとイラクとサウジアラビアの産油量急増は、世界が原油であふれかえることを意味した。新年には、イランに対する制裁の解除によって、さらに多くの石油が市場に出回る可能性がある。それでも、世界中の石油生産業者の財務の厳しさから、各社はプロジェクトの中止と掘削プログラムの削減を強いられ、将来の石油供給が抑え込まれており、そのインパクトが明白になるだろう。1バレル50ドルを下回るブレント原油相場は、業界が増大する世界需要を満たすために必要な投資を行うには、低すぎる。世界経済が景気後退に突入しない限り、2016年は石油価格がより持続可能な水準に持ち直す年になりそうだ。
(Ed Crooks)■ジョージ・オズボーン英財務相は「3月予算」で年金の税額控除を廃止するか。
廃止するだろう。財務相は2015年11月の「秋の演説」で、この問題について決断を下すのを先送りしたが、広範に及ぶ変化が訪れるという強い合図を送った。年金拠出金の事前税控除は現在、財務省に年間500億ポンド近いコストを強いている。議論されている「年金版ISA(個人貯蓄口座)」は、この費用を削減することになる。労働者は定年退職時に無税で引き出せる保証を得て、課税済み所得から貯蓄を積み立てるようになるからだ。制度変更は、実行に移すのに何年もかかるだろう。納税者は、4月の税制年度末までに年金に最大限の拠出金を払い込むことで将来に備えることができる。
(Claer Barrett)■バーチャルリアリティー(仮想現実、VR)がついに離陸する年になるか。
答えはノーだ。だが、多くの人が初めて、いつの日かあらゆる技術の中でも最も大きな変革を起こす可能性を秘めた技術を体験する年になるだろう。VRヘッドセット――別の現実の3D(3次元)バージョンを見るために使われる分厚いゴーグル――を通して見た最初の光景は、大半の人にとっては、忘れられないものだ。しかし、素晴らしいデモだけでは産業は生まれない。VRゲームが登場し始めているものの、VR装置用のコンテンツは不足している。また、VRを主流に押し上げるアプリケーション――仮想空間で医師を訪れたり、社内会議を開催したりするもの――は現実というよりは夢だ。それでも、VR技術は人々の想像を魅了するはずだ。物理的な現実はもう二度と同じには思えなくなるだろう。
(Richard Waters)←引用終わり
(2015年12月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(翻訳協力 JBpress)
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