「大都市」をシンプルに考える:(その5)
国の行政も都道府県の行政も大都市の行政も市町村の行政も、全ては「税」により賄われています。
豊かな「税収」があれば、その自治体の財政は「ゆとり」が生まれます。
逆に「税収」 に恵まれないと、その自治体の財政は「逼迫」します。
「大都市」で日々の仕事に就く人の多くはその都市に居住しますが、全ての人がその都市に居住するわけではありません。
自由な移動が保障されていますから、市境や県境を越え居住し往き交います。
日本では自然人の個人は「居住地」に「個人の所得税」を納税します。
法律が規定する法人(見做し法人も含)は、法律上登記した地や事業活動を行う地(都市を含)で「納税」します。
個人の所得は、個人の能力(知識や技芸・技術)そのものですから、高い競争力を持ち大きな所得を獲得する事業会社の能力(個々人の力量の総和)が高いと言えます。
提供能力が高く産出能力が大きいと、参加する個々人への労働配分も大きくなります。
従って、その個人が居住する地域への「納税額」は大きくなります。
本来の「都市形成」を考えるなら、仕事に従事する場と居住する場は、同一の都市であれば、事業所得も個人所得も同一地域へ納税されます。
かつての大阪は、御堂筋(梅田~淀屋橋~本町~難波~天王寺)で事業展開し、居住は上町台地(谷町~阿倍野~帝塚山)などに拡がりがあり、職住とも市内で完結していました。
やがて、大阪の拡大に伴い居住地が、北側では豊中~池田~箕面へ、西側では甲子園~香櫨園~夙川~芦屋~御影へ、北東へは香里園~枚方~樟葉などの衛星都市へ拡大し、個人の高額な納税者を失い、後を埋めたのは中間層を軸にしたボリューム層です。
「費用対効果」を応用し考えると、当然ながら「納税対支出」の効率化は崩れます。
ここに「大都市」の財政問題の本質が隠されているとも言えます。
大阪市(人口270万人)の2020年度当初予算支出/
一般予算1兆7千7百億円
(義務的支出は1兆1千2百15億円)
特別会計を含む予算総額3兆4千4百87億円収入/
市税(市民税)7420億円
市起債(新規債)1994億円
市債全残高 3兆3千5百
07億円保有基金(貯金)1616億円<市民一人当6万円を積立>
経常収支比率最悪は、
128.3%の北海道夕張市は超赤字自治体です。
二番目は、107.4%の和歌山県御坊市(二階俊博の出身重要選挙区)です。
大阪府内では泉佐野市と大東市が103.1%で八番目を分け合っています。
住民1人当の個人住民税納税額(平均)/
1位は東京都港区で30.7万円
2位は東京都千代田区で27.1万円
3位は東京都渋谷区で22.5万円
4位は東京都中央区で17.3万円
5位は東京都目黒区で16.1万円
6位は東京都文京区で14.9万円
7位に兵庫県芦屋市が14.1万円
8位は東京都世田谷区で13.3万円
9位は東京都新宿区で12.8万円
10位は東京都武蔵野市で12.2万円だそうです。
東京23区と都内武蔵野市の高さが目立ちます。
住民1人当の扶助費(義務的支出サービスの典型)/
1位は鹿児島県奄美市22.8万円
2位は福岡県田川市21.3万円
3位に大阪市21.0万円があります。
4位は福岡県嘉麻市20.3万円
5位は沖縄県沖縄市19.8万円
6位は北海道歌志内市19.3万円
7位は沖縄県那覇市18.2万円
7位におなじく沖縄県名護市18.2万円
9位は長崎県長崎市18.1万円
10位に東京都台東区18.0万円が東京23区の自治体として表れます
(東京都の二極化を表しています)
借入金(2019年度)の上位/
1位は横浜市2兆3926億円(一人当64万円)
2位は大阪市1兆8029億円(一人当66万円)
3位は名古屋市1兆3781億円(一人当60万円)
4位は京都市1兆3650億円(一人当96万円)
5位は福岡市1兆1907億円(一人当77万円)
6位は神戸市1兆1091億円(一人当72万円)
7位は札幌市1兆838億円(一人当55万円)
8位は広島市1兆491億円(一人当88万円)
9位は北九州市1兆171億円(一人当107万円)
10位は川崎市8022億円(一人当53万円)
基金(貯金)保有額/
1位は大阪市1616億円(一人当6万円)
2位は東京都大田区570億円(一人当8万円)
3位は東京都港区523億円(一人当20万円)
4位は東京都千代田区481億円(一人当73万円)
5位は東京都杉並区458億円(一人当8万円)
6位は東京都練馬区457億円(一人当6万円)
7位は東京都足立区432億円(一人当6万円)
8位は東京都江戸川区417億円(一人当6万円)
9位は愛知県豊田市371億円(一人当9万円)
10位は東京都渋谷区361億円(一人当16万円)
これを冷静に眺め考えると「東京23区」の都心4区が突出している事が分かります。
とりわけ「千代田区」の状況を眺めりと「職住」の高密度接近の結果が表れています。
同時に、大阪市は数々の問題を内包し潜在化させている事が見て取れます。
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