「大都市」をシンプルに考える:(その6)
それでは「大都市」大阪市と少し小振りな堺市の財政を見比べてみます。
A>大阪市の収入と支出(2011年の実績)
歳出総額1兆5千528億5930万3千円(一人当たり59万710円)
歳入総額1兆5千551億2144万2千円(一人当たり59万1千570円)
B>都市の人口密度(2011年の資料) 大阪市11930人/1? 自治体内シェア28% 神戸市2773人/1? 自治体内シェア27.1% 京都市1772人/1? 自治体内シェア54.3% 堺市5574人/1? 自治体内シェア9.4%
C>政令指定都市の基本収入(大阪市と堺市の比較)
1)住民税(市民税)/大阪市43.9% 堺市44.4%
2)固定資産税(分配比 市8%・都道府県2%)/大阪市40.2% 堺市41.9%
3)都市計画税/大阪市8.1% 堺市7.7%
4)軽自動車税/大阪市0.2% 堺市0.6%
5)たばこ税/大阪市3.8% 堺市3.3%
D>大阪市の財政力
1)財政力指数 0.96
2)経常収支比率 100.2%
3)実質公債費率 10.4%
4)将来負担率 238.7%
E>民生費の主な支出
1)大阪市35.4% ①児童福祉費7.6% ②生活保護費16.5% 教育費7.4%
2)堺市39.1% ①社会福祉費8.3% ②老人福祉費5.9% ③児童福祉費12.1%
F>収入の主たる構成
1)地方税 大阪市43.1% 堺市44.4%
2)地方贈与税 大阪市0.5% 堺市0.9%
3)地方交付税交付金 大阪市1.1% 堺市8.2%
4)国庫支出金 大阪市16.6% 堺市17.4%
5)地方債 大阪市9.3% 堺市8.2%
6)地方特例交付金 大阪市0.5% 堺市0.8%
7)都道府県交付金 大阪市2.5% 堺市4.1%
以上を参考までに。
2011年は、大阪都構想を維新が正面から掲げ、にわかに「大都市」の行財政の在り方が収入も支出も喧しくなりました。
例えば、大阪市も堺市も、基本の比率は大きく変わらず、重大な瑕疵があるワケではないのです。
なぜ、支出が同じようになるかと言えば、日本国憲法が定める「最低限度の文化的な生活を保持」する事を保障し、維持できる環境を整え扶ける責任を負うからです。
そのため、国は「基準財政需要額」の算定基準を設け、それに準じ、「大都市」を含めた基礎自治体(市町村)を支援する事で、一方的な偏りがなくなるように「行政の公平性」を維持しているためです。
「大都市」の経済構造が変化し、それに伴い労働条件も変化を余儀なくされます。1990年代の幕開けと共に「グローバリゼーション」の旗が打ち振られ、国の政策も明確に対「中国」を志向する方向へ舵を切り、大阪の工業生産を支えてきた中小企業(特に繊維産業に懸かる事業者)の中国進出が始まりました。
資本と製造手段は「中国」へ移転しましたが、労働力の移転はなく、基本的には多くの「失業」を生み続けました。
「産業転換」が機能しないまま「生産機会」と「労働機会」を失ったとも言えます。
とりわけ大阪市は単位(1?)当の人口密度が高く、様々な点で「都市」に「不満」が貯まりやすい条件を克服できないまま、人口流出も続き巨大な不満の基になりました。
これらを背景に「大都市」としての大阪の「都市経済」は巧く循環しなくなり、税収入は低下し民生費を中心に「財政支出」が増大する状況に陥り抜け出せないまま、有効な政策を打ち出せず、例えば「米国」でラストベルトと呼ばれる中西部地域と同様の状態に覆われています。
ここでは「大阪都構想」や「大阪市の総合区制度」あるいは、広域行政を大阪府に一元化する事の是非を論じるモノではありません。
現実の問題として「大都市」が、どのように形成され、歴史を歩む過程で、どのように発展し、そこに蝟集する「住民」に対する「行政サービス」を展開する事で、様々な問題を如何に解決するか、それを鳥瞰的に考える上での一視座として触れてみました。
「大都市」が抱える諸問題は、都市化した「日本」が潜在的に抱え込む重大な問題であり、整理し課題化し解決させる必要があり逃げられない事と云えます。
「大都市」である「大阪」が抱える諸問題は、実は「日本」が抱え込む問題なのです。
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