「金持ち三代続かず」とは、苦労のない三代目のボンボンは取り巻きにチヤホヤされ、甘い夢想で検証せずに取組み資産を喰い潰すという意味だが
記憶の整理を再整備し記録しておく:
明治の近代国家が産声を上げた頃、大阪は幕政がもたらした「各地域の産品交流交換」の集積地であった。
それに伴い「金融」も発達し「先物取引」でも有力な集積を成していた。
それもあり、
こと「消費財」の「生産や供給」で都市として独自の機能や技量を発揮した。
その中で問屋また卸売業が発展し、更にそれが「生産と供給に金融」を組み合わせた「大規模中間取次業(商社)」として発達し、互いに覇を競い合い活気に満ちていたとされる。
近代社会で粗削りの「資本主義」の勃興期は剥き出しの覇権競争が展開され、勃興し起業すれば消滅するの繰り返しを経て、やがて一定の大店が組織力を強め、扱い商材を強化し、金融を巧みに組み入れ商権を拡大した。
その一つに勃興の「I社」があった。
よく「金持ち三代続かず」と言われるが、そのとおりの展開で、初代は成り上がりの成金ではなかったが、その種の側と然程も変わらずに社業を打ち立て、中国市場でも名を馳せ高額納税を誇り、当時の成功者が棲まいする神戸の地域に広大な住居を得るに至り、大阪では商人の一角に名を成す存在になった。
二代目は、戦後の混乱期に「信用」を元手に経営を必要に応じ修正を加えながら名声と社業を保持してきた。
しかし、1970年代以降は予期せぬ経営環境に見舞われ旧弊な人材とその体質また思考による判断では切り抜けられず、金融に救援され、その後は支援を受ける立場へ追い込まれ、二代目は名誉ある閑職に追いやられ、その子息としての三代目Nさんは、銀行の画策の下に多少の商縁を持つ取引先へ体よく追い払われる。
その頃までは、此方は興味深い事ながら、単なる見物人の一人に過ぎなかったのだが、三代目のNさんの守り役でもあったYさんが助力を求めて来た。
最初は、肩にチカラを入れない暇な時間に「茶飲み話」としての付き合いに止めたが、追い払われた「I社」を巡る巨大な経済事件が世間の耳目を集め、その事情は社会的に許容し難い段階に至り、事態を収拾するために創業家で象徴性の高いNさんは、一切の実権は取り上げられた状況で鍋の蓋として「I社」へ戻される事になった。
それらの一連に伴い、
「I社」をその頭上から指図し細かな嘴を入れ続けた「SBK」は、一蓮托生で「I社」関連の諸事業の精査に乗り出し、これ幸いにとばかりに関連の「T社」と「L社」の処理と措置を進める上で「茶飲み話」に止めず、強い協力要請を受け断り切れずに仕方なく引き受けざるを得なくなった。
いずれの2社も「財務」では、「長短の借入金」が巨額で、どうしようもなく「過剰債務」に喘いでいた。
それは事業能力を大きく越え圧死させるかの如く悲惨な状況にあった。
何らの裏付けもない「事業(作文)計画」の施行実施に伴う事が原因で、中止すればと分かっていながら、重石としての三代目Nさんの名誉を考えできずに傷口を拡げていたのだった。
「T社」も「L社」も解体するにも当面の名誉や信用保全が必要で、従業者の整理も周到に準備しなければならず、薄氷を踏む思いだった。
また、三代目Nさんのプライドまた体面そして名誉を傷付けず、上手くフェードアウトさせなければならず、その間の「資金手当」とその「損切り」および「総(可能)回収」で銀行の諒解を得る必要があり、なかなか一筋縄には進まなかった。
一方で社会的には、日本の金融そのものが信用を毀損する大事件であり国も手を焼いたと(考えている9。
「SBK」は自行の名誉を護りきる必要があり、巨額の損失を被るにも信用制度上の限度があり実に厳しい中身になった。
結果的に「T社」は蘇生でき、一方の「L社」は市場競争の面で商品力も弱体で難しく、増減資を繰り返しながら綺麗に「息」を引き取らせる事になった。
いまは、
三代目のNさんも、既に亡く、ご子息も「I社」とは無縁の事業会社に就業し活躍していると聞く。
三代目のNさんは、育ちが良すぎ、世間が見えなくなる傾向があり「ナゼできないか?」を、冷静に考える事をしなかった。
①構想を宣べる。②目標を立てる、③計画を造る、④施行実施する、⑤評価する(自己点検/自己評価/相互評価)、⑥計画を修正する、⑦到達へ、⑧総合評価する。
この一連で①だけを宣べ、②以下は社内また社外へ丸投げし、結果だけを聞こうとする。そして間違いを厳しく糺すが、その最初が間違っている事には気が付かない。
失敗する会社、失敗する国は、いずれも間違いなく同じだ。
如何に、創業者が素晴らしくても「金持ち三代続かず」とは、
実によく言った教訓であるといえる。
「老舗」と云われ、世間で評されるようになるには実に困難な道程を丁寧に乗り越え、本当に必要な仲間を抱え、厳しく注意してくれる真実の友人を保たなければ難しいと。
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