引用開始→《元舞妓告発の波紋》「ほんまやからばらされても仕方ない」別の元舞妓も明かした花街に横行する“秘密の遊び”「お客さんの“モノ”を舐めたら何十万円、それ以上のことは…」
(「文春オンライン」特集班 2022/06/30)

《この世から抹消されるかもしれんけど、これが舞妓の実態。当時16 歳で浴びるほどのお酒を飲ませられ、お客さんとお風呂入りという名の混浴を強いられた(全力で逃げたけど)。これが本当に伝統文化なのか今一度かんがえていただきたい》
6月26日、Twitterに投稿された元舞妓を名乗るAさんの告発が波紋を呼んでいる。2015年から2016年の8カ月間、舞妓として働いた当時16歳のAさんは《お客さんと山崎18年一気飲み大会で勝利した時と飲酒》の場面として、客とワイングラスを傾ける写真を投稿。
さらに、続くツイートで《旦那さん制度、まだあります。(略)私は5000万円で処女を売られそうになった》《身八つ口から手を入れられて胸を触られることも、個室で裾を広げられてお股を触られたこともあります》と、性被害の実態を告発したのだ。
「ほんまの事やからばらされても仕方ない」
このツイートは注目を集め、現在30万回以上のいいねがつき、12万回リツイート(※6月30日現在)されている。これに当惑したのは花街の関係者だ。
「投稿があった翌日の朝、花街では『舞妓は一般人の目があるところで飲酒せず、お茶屋の中で飲酒するように』とお達しがあったそうです。お客様からも、自分まで不健全な客だと思われたら困ると言うことでキャンセルが相次いでいるようです。
現役の舞妓ちゃん達は、『ほんまの事やからばらされても仕方ない』『もっといろいろ公にしてほしい』と思っているようです」(花街関係者)
白塗りの化粧に華やかな振袖で花街を歩き、宴会に花を添える舞妓の存在は、京都の伝統的な文化として世界的にも認知されている。
舞妓とは芸妓になるために修業する15歳から20歳の女性のこと。彼女たちの多くは10代で京都の祇園をはじめとする五花街にある「置屋」に所属し芸事を学び、ある程度実力をつけると「お茶屋」の宴会の場に送り出され、舞や三味線を披露したり、お酌をしたりして客をもてなす。
そんな舞妓たちが「未成年飲酒」「混浴の強制」といった違法行為や人権侵害に晒されているというのだ。にわかには信じがたい話だ。SNSでも「告発は嘘」説も浮上している。
しかし、Aさんの一連のツイートを見て「彼女の言っていることは大筋、本当です」と語るのは、元舞妓のBさんだ。
「未成年舞妓に番号札をつけ…」企業主催の一気飲み大会
「私は花街の置屋に数年前まで在籍していました。まず、未成年の舞妓による飲酒についてですが、これは当たり前に行われていました。特にひどかったのは、毎年夏に開催されるとある企業が主催の一気飲み大会です。一番早くビールを飲めそうな舞妓や芸妓を、企業の会長、社長陣が予想するというかなり大きな催しでした。
夕方に会場である料亭に集められた舞妓は、主催企業のロゴが入った浴衣に着替え、番号札をつけられます。お客さんの予想が終わると、一気飲みのスタート。社員の方が『頑張れー!』と言いながら太鼓を鳴らす間に一番早く飲んだ舞妓が勝者となります。勝った芸妓や舞妓には、金一封や金券が渡されました」
客は30人、芸妓や舞妓は20人ほど。その中には未成年の舞妓もいたのだという。
「花街側が参加者の年齢を主催企業に偽っていたのか、企業側が黙認していたのかは分かりません。どちらにしても、未成年の一気飲みが行われていたのは確かです。
私の友人の舞妓は、お酒が飲めないのに強制的に参加させられ、酔いつぶれていた所をタクシーに放り込まれ、その後、路上で倒れているところを発見されました。急性アルコール中毒になるなど深刻な事態になっていたらどうするつもりだったのだろうと、危機感のなさに背筋が凍りそうでした。
後輩の話によると、近年の大会では、舞妓はノンアルコールビールを一気していたそうです。ノンアルコールじゃ飲めないと言ってビールを飲んでいた子もいたそうですが……」
常連客の述懐「未成年の飲酒に加担してしまった」
現在も花街に通う中年男性もこう述懐する。
「こうなってから振り返ると、未成年の飲酒については私も加担してしまった部分があると反省します。最初は10代の舞妓さんにお茶を勧めていたのですが、『私はウイスキーの水割りが好きなの』と言われてしまうと止めるのは無粋な気がして……」
京都のお座敷遊びといえば、金銭的に余裕のある人が楽しむ高級なものというイメージが強い。企業の社長や大学関係者、芸能関係者など社会的地位の高い客が多いこともあり、花街の人間の口は堅く、舞妓たちにも携帯電話を持たせないなど、外部との接触手段を制限しているため、内情はなかなか伝わってこない。
「京都には五花街といって、五つの花街があり、それぞれに特色があるんです。お客さんも、最も格式が高いとされる祇園で舞妓さんの舞踊を堪能した後、親しみやすい雰囲気の先斗町に繰り出したり、その時々で使い分けているんです。
そんな花街の一部の町、一部の置屋で舞妓さんの性被害、人権侵害があったのは確かだと思います。実は私も、あるお客さんに『お風呂入りができる置屋があるよ』と囁かれたことがあります。それはなんですか?と問うと、『混浴ができるんだよ』と。それを聞いて気分が悪くなりました。
私はあくまで京都の雰囲気が好きで、舞妓さんや芸妓さんと日本文化について話をするのが好きなんです。『お風呂入り』なんて、口に出すのも憚られる悪しき慣習ですよ」(同前)
「汗を流していきませんか?」お客さんを置屋に連れていき…
Aさんの投稿にも《お客さんとお風呂入りという名の混浴を強いられた》とある。Bさんも「お風呂入り」という制度についてこう話す。
「昔は、舞妓に金銭面でサポートしてくれる『旦那さん』が初めてついた時、その男性に処女を捧げることを《水揚げ》と言ったそうですが、同様のことが今も行われていると思います。舞妓の旦那さんになってくれそうな男性を見つけると、置屋を仕切るお母さん方や先輩の芸妓が『汗を流していきませんか?』と誘って置屋に連れていき、帰ってきた舞妓と強制的に混浴させるのです。それを『お風呂入り』と言います。
私はやったことがないので、中でどのようなことが行われていたのか知る由もありませんが、お風呂入りをした時点で、短期にしろ長期にしろ、旦那さん契約をする場合が多かったです」
半ば強制的な「旦那さん契約」も…
一人前の舞妓になるには、着物や装飾品、伝統芸能の習い事など莫大な金がかかる。「旦那さん制度」とは、置屋と契約して多額の金を払い、ひいきの舞妓のパトロンとなって彼女たちをサポートするという契約を指すのだという。
「お母さん方は、旦那さんから払われた金を、舞妓の生活費や修業にかかる費用に充て、本人には月々のお手当を渡します。お手当の金額はお茶屋さんと本人、お客さんの三者で取り決めるのがうちの町の基本的なやり方でした。
他にもマンションを準備したり、着物を買ったりといった援助をしてくれる方もいますね。ありがたい存在なのですが、中には性的な目的を抱くお客さんもいるし、お金のためにお母さんに無理やり契約させられるケースもあります」(同前)
Aさんのツイートにある《5000万円で処女を売られそうになった》ということも、それにあたるのだろうか。前出の中年男性客もこう証言する。
「一部の置屋で『旦那さんをとらないと花街においておけない』と、半ば強制のような形で契約させられた舞妓がいるという話を耳に挟みました。『旦那さんを取るのが嫌であの子辞めたらしいわ』という噂も聞いたことがあります。
でもひとつ言っておきたいのは、ほとんどの方が純粋に舞妓さんを応援する後見人となるために契約を結んでいるんです。ただ、性的搾取を目的とした契約がないとは言い切れない。お座敷遊びの場でも、舞妓さんの着物の身八ツ口から胸元に手を入れるといった、ふさわしくない行為を目撃したこともあります。
本来はそういった性的被害から舞妓を守る立場の置屋さんが、お金のために舞妓さんの人権侵害に加担し、あるいは見て見ぬふりをしているのだとすれば……それは、許されないことだと思います」
「お客さんの“モノ”を舐めたら…」誘われた“秘密の遊び”
BさんはAさんの投稿を見たことで、「忘れようと蓋をしていた記憶がよみがえった」。
「先輩舞妓であるお姉さんから“秘密の遊び”に誘われたことは何度もあります。京都の老舗ホテルのスイートルームに舞妓が集められ、『お客さんの“モノ”を舐めたら何十万円、それ以上のことをしたらその場で200万円がもらえるよ』と……。私はただ、着物と舞踊が好きでこの業界に入っただけなのに、あまりにも周囲が性的に乱れていることに疲れてしまい、辞めることにしました」
過去に花街遊びを経験したことのある40代の男性も、こう話した。
「舞妓さんもゲームをして盛り上げてくれるし、酔いが回ってきたら着物の裾に手を入れるくらいのことはあったかもしれない。そこまで滅茶苦茶な遊び方をしないにしろ、勘違いしている連中はいただろうね」
花街の“伝統文化”は変われるのか
一方で、「それはあくまでも一部の客」と言うのは、前出の中年男性客だ。
「今回、投稿が拡散されたことで、すべての花街でそのような悪事が横行しているかのように捉えられてしまっていますが、そんなことはないのです。もちろん、一部とはいえ、そういうことがあることを知りながら放置していたのは許されることではありません。しかし多くのお客さんが、舞妓さんの舞や会話を楽しむといった健全な目的で訪れていることを知ってもらいたい。
伝統芸能の担い手が減る中で、花街で五つの日本舞踊の流派が存続しているのは、舞妓さんたちがいるから。舞妓さんの着物、帯、帯留めのぽっちり、花簪を作る職人さんなど、さまざまな人の努力の上に花街が存在し、今日まで続いてきました。彼女の告発をきっかけに、真摯に頑張っている舞妓さんが報われるような形で、花街がよい方向に変わっていくことを祈るばかりです」
Aさんは一連の投稿の中でこう語っている。
《舞妓さんの職業を無くしたいとは思っていません。いい方向に建て直してほしいのです。芸を愛する人が芸を磨き、伝統文化を発信して欲しい。今までクローズだったが、オープンにする時だと思う》
6月28日、厚労大臣会見でこの件をめぐって記者から「舞妓や芸妓が労働基準法上の労働者とみなされるのか」と問われた後藤茂之大臣は「一概には言えない」と明言を避けた上で、「芸妓や舞妓の方々が適切な環境の下で、芸妓や舞妓としてご活動いただくことが重要」との見解を示した。
日本が誇る伝統文化の担い手である舞妓。その労働環境は守られてしかるべきだろう。今こそ、変わるべき時かもしれない。←引用終わり